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1986年12月以来、37年半ぶりに1ドル=161円台まで下落
1986年12月以来、37年半ぶりに1ドル=161円台まで下落
2024年6月27日日経夕刊一面に『介入効果、2カ月で消失~円安、一時160円80銭台 米利下げ遅れが誤算』が報じられている。
『26日のニューヨーク外国為替市場で対ドルの円相場が一時1ドル=160円80銭台まで下落し、1986年12月以来37年半ぶりの安値を付けた。日本政府・日銀が4月末以降に実施した為替介入による円安抑止効果は2カ月で切れた形だ。底堅い米景気を背景に米利下げ転換の時期が定まらず、介入で時間を稼ぐ間に円売り・ドル買いの勢いが弱まるという日本の当局側の想定は崩れている。
26日は心理的節目と見られた1ドル=160円や4月29日に付けた34年振り円安水準の160円24銭を次々と突破し、米東部時間夕方には160円88銭まで下落した。27日の朝方も160円台半ばで推移している。日本政府・日銀は4月29日と5月2日(日本時間)に実施したとみられる円買い・ドル売りの介入で、円安局面では過去最大の計9.7兆円を投じた。米連邦公開市場委員会(FOMC)の開催後すぐという市場の虚(キョ)を突くタイミングも奏功し、円は一時151円台まで上昇した。(途中省略)』
今回の『37年半振りの161円台のドル円』の記事で目立つのが、この「為替介入の効果」論議だが、未だ多くの人々が為替介入は過度な円安を食い止めるために日本政府が行っていると思い込んでいるためなのだろう。
2024/05/27『「購買力平価」は何故、2ヶ月遅れで公表されたのか?』のT-Modelコラムにおいて、
『イエレン米財務長官は5月23日、為替介入について「日常的に使われる手段ではない」「介入は極めてまれであるべきだ」とする立場を改めて表明、「介入がまれであることを願う。そのような介入がめったに起きず、過度な変動がある場合に限定され、事前に協議があることが期待される」と強調したが、日本政府が単独で為替介入を行えるはずもなく、イエレン財務長官の発言も「茶番」と推測される。今回の一連のマーケットの動きを時系列で検証すると、22年10月の為替介入でも噂されたように米国への資金供給のための為替介入が日米合作で行われたと考える方が自然で、ただ、2ヵ月遅れとはいえ、「購買力平価」をここで発表してきたということは実勢のドル円も目先は一旦、円安ピークを示唆するシグナルなのではないだろうか。 』と指摘した。
2ヵ月ほど発表を遅らせていた「購買力平価」は5月108円と通常に発表され、5月末の「購買力平価(消費者物価ベース)-ドル円」は-49.3円だが、6月末はドル円160.87円まで円安が進行したことで仮に5月購買力平価(108円)が変わらないとすると、「購買力平価(消費者物価ベース)-ドル円」は-52.87円に広がることになり、「ドルペトロダラー体制」がスタートした73年1月-53.4円の過去最大に迫る。この水準を超えるということは、1973年からスタートした「ドルペトロダラー体制」がある意味、終焉することを示唆するため、「購買力平価(消費者物価ベース)-ドル円」からは最終段階にあるのではないだろうか。
そして、このような不自然な円安を作っているのが、これまで世の中になかった発見がT-Model理論『日米現金比率(ドルベース)』なのである。同指標は「購買力平価と実勢のドル円」の乖離を唯一説明できる指標として発明・発見した。実は、このT-Model理論『日米現金比率(ドルベース)』は両国の中央銀行が人為的に行うものであり、アベノミクス以降、明らかに不自然な動きを示していることは日米合作で今回の歴史的な円安が行われてきたことを示している。『日米現金比率(ドルベース)』は4月0.32倍→5月0.32倍だが、今回の161円台までの円安から推測すると、6月はさらに低下し、72年2月0.27倍に近づいている可能性がある。それは5月7300億ドルまで減少している日本の現金通貨(ドルベース)が6月はさらに減少して15年5月6908億ドルに迫っているかが注目される。
また、以前にもご紹介した「円売り投機筋ポジション」も重要な指標である。何故なら、現在の不自然なドル円とドルインデックスの乖離が大きくなっていることは「円キャリートレード」が積み上がる証拠で、それが過去最高レベルにまで膨らんだ「円売り投機筋ポジション」が表していると推測されるからである。「円売り投機筋ポジション」は4月26日週-179919枚と、リーマンショック直前の17年前に付けた過去最高の07年6月25日週-188077枚に並び、当時は今回とよく似ている。今回のように過去最高レベルの「円売り投機筋ポジション」が積み上がった2007年を振り返ると、07年6月25日週-188077枚→08年3月24日週+65900枚と「円売り」から「円買い」に転換する過程で、ドル円も07年6月11日週123円→08年3月24日週99円まで約24円幅、約19%の円高となっている。「円キャリートレード」の巻き戻しが起きたためだが、その後、98年8月頃に起きた「LTCM危機」「ロシアデフォルト危機」など大きな危機に発展している。今回も大量に溜まっている「円キャリートレード」の巻き戻しが起きて、世界的危機の引き金を引く可能性にも注意すべき段階を迎えているが、それは同時に、「ペトロダラー体制」の揺らぎから「戦争」「地震」を誘発することだけは忘れはならない。今回も約20兆ドルに積み上がっていると云われる「円キャリートレード」の巻き戻しがいつ、何を契機に起きるのか。
このように現在の37年半振りの円安をT-Model理論で読み解いていくと、政府・日銀による人為的なマネーの量の操作とそれを加速させている投機筋の「円キャリートレード」がドル高以上に円安を加速した可能性があり、世間が大騒ぎするような日本のファンダメタルをベースにした構造的な円安とは言えないのではないだろうか。実際、それを証明しているのが「購買力平価(消費者物価ベース)」で、5月1ドル=108円と過去最高レベルの円高水準である。ただ、長期的視点でみると、拙著『そして偽装経済の崩壊が仕組まれる』(2015年12月出版)の第三章『サイクルがすべてを決める』において示したT-Model理論『ドル円の「40年サイクル」』の円安局面の40年間が2010年代から始まっていることだけは忘れはならない。実は、このT-Model理論『ドル円「40年サイクル」』には重要な法則性が存在する。
円高の40年間で円高局面は10年ごとに4回あり、1971年からの第一局面、1982年からの第二局面、1990年からの第三局面、2000年(実際は98年から)からの第四局面の一方、円安の40年間?の円安局面も、2011年からの第一局面、2020年からの第二局面と10年ごとに円安局面起きている。そして、この1回の円高・円安局面のドル円の騰落率は約50%で、2020年からの第二の円安局面も既に50%を超えており、そろそろ一旦は円安局面が終了してもおかしくないタイミングを迎えていることになるが、それは何をきっかけに始まるのだろうか。そして、その後には、更なる円安となる第三の円安局面が控えており、それは2030年前後からスタートすることになる。また、2031年には「世界の歴史を左右する出来事」が起きる可能性が高いことを示唆するが、それは仮に現在の「ブレトンウッズ体制2」が終焉した後でもTーModel理論『ドル円の「40年サイクル」』は成り立つのかが今から楽しみである。いろいろな意味でこの不自然な為替が明らかになるときはリアルの世界経済は想像を絶する衝撃が走ることだけは間違いないだろう。