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23年1~3月期クレジットカードの延滞が過去最悪のスピードで悪化


23年1~3月期クレジットカードの延滞が過去最悪のスピードで悪化

2023年5月16日日経夕刊に『クレジットカードの延滞 米家計、14年ぶり増加幅~1~3月、インフレ・高金利が影響か』が報道されている。

『米国の消費者の間でクレジットカードのローン延滞が急増している。ニューヨーク連銀が15日発表した四半期報告書によると、2023年1~3月に深刻な延滞に移行した割合は4.57%と前の四半期(22年10~12月)から0.56ポイント上昇した。増加幅は09年4~6月以来、14年ぶりの大きさとなる。長引くインフレや金利上昇が重荷となっている可能性がある。

ローンのタイプ別でみると、90日を超える深刻な延滞に新規に移行した割合はクレジットカードが最も高かった。カードの債務残高は年末年始商戦の後となる1~3月に減る傾向にあるが、今年は9860億ドル(約134兆円)と全四半期比で横ばいだった。マイナスにならなかったのはデータを遡れる03年以降で初めて。(途中略)

ニューヨーク連銀によると、1~3月の家計の債務残高は全体で17兆500億ドル前四半期から0.9%増加し、データが遡れる03年以降で最高となった。他のローンタイプでは住宅ローンの債務残高が1.0%、自動車ローンが0.6%、学生ローンが0.6%それぞれ増えた。

3月以降に米銀破綻が相次ぎ、米銀の融資態度がより厳しくなるなか、債務残高の伸びが鈍化するかどうかが注目されている。』

2023/02/20『過去最高に膨らんだ米カードローン残高が支える米国の個人消費の実態』のT-Modelコラムにおいて、

『1月小売売上高の2021年3月以来、約2年ぶりの大幅な伸びとなったことをうけて市場では『借入コストの上昇にもかかわらず自動車などの購入が増加し、米経済が力強さを保っていることを示唆した』と指摘している。

たが、それは冒頭の記事にあるように、単に過去最高額に借金を膨らまして、消費を増やしたに過ぎないことが明らかだろうか。実際、個人消費の実態を示すクレジットカードの22年12月末ローン残高は前年比+15%増の9860億ドル(132兆円)と、最も高い伸びで過去最高に膨らみ、貸倒償却率も前年比+24%のスピードで同4%と、コロナショック時の5.3%に迫っている。

また、今後、注意しなければいけないのは借入全体の10%弱を占める自動車ローンで、22年12月末の貸倒償却率が前年比+42%と、リーマンショック時を上回る勢いで、2.2%とコロナショック時の2.4%に迫っているからである。

そして、何故、クレジットカードローンと自動車ローンに注目するかというと、過去、両ローンの貸倒償却率が下げ止まるまで株価が下げ止まらない傾向があるからで、両ローンの貸倒はまだまだ始まったばかりにしか見えないからである。』

23年1~3月期のクレジットカード残高は9860億ドルで、前年比ベース伸び率は+17.2%と、03年の統計開始以来、最高の伸び率。クレジットカードの貸倒償却は22年1~3月期3.04%をボトムに、23年1~3月期4.57%へ前年比+50%で急上昇、悪化スピードも03年の統計開始以来、最高の伸び率となっている。

一方、自動車ローン残高は1.562兆ドルと統計開始以来、過去最高で、前年比伸び率は+6.3%。自動車ローンの貸倒償却は21年10~12月期1.56%をボトムに、23年1~3月期2.33%と前年比+44%で過去最悪のスピードで悪化、コロナショック時のピーク水準である20年1~3月期2.37%に並んでいる。

『何故、クレジットカードローンと自動車ローンに注目するかというと、過去、両ローンの貸倒償却率が下げ止まるまで株価が下げ止まらない傾向があるからで、両ローンの貸倒はまだまだ始まったばかりにしか見えないからである。』と指摘したように、クレジットカードと自動車ローンの貸倒償却は過去最悪のスピードでの悪化に対し、株価は不自然な反発で「乖離」が広がっている。「乖離」が起きているということは株価が人為的に「操作」されている証拠であり、それだけ株価を支えなければなあらない事情があるのだろう。

米国の個人消費は、貯蓄を切り崩して消費に充てることが限界を迎え、それを補うかたちで過去最高まで膨らんだクレジットカードも延滞・焦げ付きが目立ち始め、そろそろ限界。いよいよ「資産効果」のみでしか個人消費を支えられなりつつあり、今後は「米国株式と米住宅価格が下落するときに米国の個人消費は本格的に縮小する」段階を迎える。

消費者物価を考慮した実質米小売り売上高(自動車を除くコア)の前年比は、22年12月+0.2%→23年1月-1.9%→2月-2.0%と2ヵ月連続でマイナスに陥っている。過去、同指標がマイナス圏に陥ると、ITバブル崩壊やリーマンショック、コロナショックに発展しており、今回も「○○ショック」のシグナルが点灯したことを意味する。米国で大恐慌以来の信用収縮が起こるなか、「資産効果」のみで支えられている米国の個人消費がどのように崩れるかが注目される。

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