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6月中旬要注意 キャリー取引調達通貨 円からスイスフランに
6月中旬要注意 キャリー取引調達通貨 円からスイスフランに
スイス中銀、 6月利下げ観測で0%、9月に3年振りマイナス金利突入か
2025年5月8日 日経新聞に『スイス中銀 利下げ観測~「嫌米マネー」殺到、デフレ圧力』が報じられている。
『欧州の永世中立国スイスがトランプ米政権で揺れる米国市場から逃避したマネーの受け皿になっている。通貨スイスフランは年初から対ドルで1割上昇し、10年ぶりの高値を記録した。通貨高がデフレの圧力を強めかねず、市場で中央銀行によるマイナス金利の再導入観測を呼んでいる。(途中略)
永世中立国スイスがドル資産の目減りを警戒したマネーの待機場所になっている。トランプ政権のイスラエル地域を巡る政策を嫌気した中東の政府系ファンドにも、米国資産から離れる動きがある。(途中略)安全な資産の置き場として選ばれるスイスだが、皮肉にも逃避マネーの流入は経済を傷めかねない。通貨スイスフランは4月に1ドル=0.8スイスフラン台前半と15年1月以来の高値をつけた。(途中略)
トランプ氏が4月発表した「相互関税」はスイスからの輸入品に課す税率を減速31%とした。欧州連合(EU)の20%や英国の10%と比べ高い。(途中略)市場ではスイス国立銀行(中央銀行)が政策金利をマイナス圏に引き下げるとの観測が強まっている。現在の政策金利は日銀の0.5%を下回る0.25%となっている。英LSEG(英ロンドン取引所グループ)によると、金利先物市場は次回の6月会合で0%に引き下げる確率をほぼ100%とみている。さらに、次々回の9月会合で市場が織り込むマイナス金利の導入確率は50%ほどに高まった。再導入されると3年振りになる。
すでにスイスではインフレ鈍化がデフレ懸念に変わりつつある。5日発表された4月の消費者物価指数(CPI)は前年比の伸び率がゼロ%と横ばいとなった。0.2%の下落だった21年3月以来の低水準となる。(途中略)24年、世界の主要中銀で真っ先に利下げへの転換を決めたのはスイスだった。貿易戦争で世界経済が減速に向かう中、本格的な緩和局面の到来を予感させる号砲となるか注目される。』
2025/03/24『「世界最低金利」を脱した日銀の政策金利が今後起こすこと』のT-Modelコラムにおいて、
『実は、T-Model理論『円キャリートレード指数』と『スイス政策金利-日銀政策金利』の両指標は極めて連動性が高く、『スイス政策金利-日銀政策金利』が07年ピークに向けて急上昇する過程で、T-Model理論『円キャリートレード指数』も07年11月ピーク1.55まで急上昇し、ドル円は07年5月122円で円安ピークを付けている。その後、『スイス政策金利-日銀政策金利』が2011年~2013年-0.1%でボトムを付ける過程でT-Model理論『円キャリートレード指数』も0.94まで下落、ドル円は2012年1月76円まで円高が進行した。
今回も『スイス政策金利-日銀政策金利』が2024年ピークに向けて急上昇する過程でT-Model理論『円キャリートレード指数』も04年6月ピーク1.52まで急上昇し、ドル円は2024年6月160円で円安ピークを付けている。その後も07年当時と同様に、『スイス政策金利-日銀政策金利』が一気にマイナス圏まで急低下しており、T-Model理論『円キャリートレード指数』も同指標を追いかけて急降下する近未来の条件が整い始めた。そして、それは「〇〇ショック」が起きて急激な円高と株安が起きる近未来を意味するが、いつ、何をきっかけに起きるのか。構造的円安論を主張する市場関係者は「デジタル赤字」「貿易赤字」「新NISA」など実需の円売りを強調するが、それは全体の3割程度。それよりも遥に大きいのがこの「円キャリートレード」など実需以外の円取引でその影響を軽視すると「円安構造論」に陥る典型例ではないだろうか。 』と指摘した。
冒頭の記事で、スイス国立銀行が0%に政策金利を引き下げると予測されている次回の6月会合は「6月16日」。一方、日銀の6月の金融政策決定会合は「6月16日~17日」と重なっており、スイス政策金利が0%に引き下げられ、日銀の政策金利0.75%に同時に引き上げことも十分に考えられる。仮に、それが現実化すると、『スイス政策金利-日銀政策金利』は-0.75%に広がり、「キャリー取引」の調達通貨が円からスイスフランに変わるきっかけとなり、T-Model理論『円キャリートレード指数』が急降下する可能性がより高まる。
仮に、日銀が6月に政策金利を引き上げなかった場合、次回7月会合の7月30日~31日となりそうだが、トランプ政権が2025年4月9日に発表した「相互関税の90日間停止」の期限が「7月9日」に迎える。トランプ大統領は「日本は円安誘導」していると問題視する発言をしていることから、その期限の前に何らかの対応を迫られることに加えて、7月は参議院選挙も重なることから、スイス国立銀行と同じ6月に日銀が政策金利引き上げの可能性も捨てきれないだろう。6月中旬~8月はいろいろ重要なスケジュールが重なる要注意の時間帯を迎えることになるのではないだろうか。