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FRB、資産価格急落リスクに警鐘
FRB、資産価格急落リスクに警鐘
2021/05/07日本経済新聞電子版に『FRB、資産価格急落リスクに警鐘』が報道されている。
『米連邦準備理事会(FRB)は6日発表した金融安定性報告(FSR)で資産価格の急落につながるリスクに警鐘を鳴らした。株式などリスク資産は期待される収益や過去の水準と比べて高くなっていると指摘。価格の急落に対し「脆弱であるかもしれない」と評価した。FRBはこの半年ほどの資産価格上昇について、長期金利が低いことや景気回復期待が背景にあるとみている。株価は史上最高値の更新を続け、社債や融資の金利も歴史的な低水準にある。FRBは「バリュエーション(資産に対する価値評価)が全般に高い」と指摘。いまは投資家がリスク資産の投資に積極的だが投資家心理が悪化すれば急落につながる恐れもあるとした。3月に起こったファミリーオフィス、アルケゴス・キャピタル・マネジメントの損失問題にも言及した。同社が一部株式の持ち高を膨らませていたため、持ち高解消をきっかけに取引金融機関が多額の損失を被ったことを指摘した。金融市場全体への波及は限定的だったものの、「金融機関の動きが幅広い金融システムに悪影響を及ぼす恐れがあることを浮き彫りにしてい
る」とした。
その一因として、ノンバンクへの銀行貸し出しが急増していることをあげる。大手銀行からノンバンクに対する融資などの信用供与は、未利用分も含め20年末に1.6兆ドルと過去最高を記録した。FRBは物価安定や雇用の最大化とともに、金融システムの安定も重要な使命だ。この1年は物価や雇用を重視し、強力な緩和を続けてきたが、仮に金融システムの安定性が揺らぎ始めると緩和の継続も判断が難しくなる。パウエル議長は4月28日の記者会見で、株式市場に「フロス」(バブルより細かい泡)があるとの見解を示した。現時点で金融の安定性に問題はないとしつつも、資産価格の上昇は「金融政策と無関係ではない」と話す。ブレイナード理事は報告書で、雇用と物価に集中した金融政策運営のためにも適切な金融規制や金融機関への監視が重要だと訴えた。アルケゴス問題に関しても、より詳細で頻繁な開示が必要だとの見解を示した。異例の金融緩和が長期化しているだけに、金融市場の過熱感が強まるようであれば今後の金融政策運営に影響を及ぼす可能性がある。』
FRBは年に2回、金融安定性報告書を公表し、金融機関や市場の健全さを点検している。金融の脆弱性について、昨年11月の金融安定報告書では「軽微」とされていたが、報告書の責任者であるブレイナード理事は今回、「リスクを追い求める動きが加速し、脆弱性は高まっている」と指摘。この半年にゲームストップ株の乱高下やファミリーオフィス(個人資産の運用会社)のアルケゴス・キャピタル・マネジメントの大きな損失といった騒動が挙げられる。報告書では資産価格は収益や過去の状況と照らし合わせても「バリュエーション(価値評価)が全般に高い」と分析されているが、中小企業の弱い財務体質や警戒水準にあるヘッジファンドのレバレッジ比率も言及。2月19日に発表された半期に一度のFRB金融政策報告では、「構造改革がなければ、2020年3月に見られた脆弱性が解消されず、将来的にショックを大幅に増幅させる可能性がある」と指摘していることから、『ヘッジファンドのレバレッジ比率』の監視強化の動きは早まる可能性がある。金融緩和と金融安定の両立という難題に直面しているFRBは、今回の「資産価格の急落」への警鐘で、近い将来、金融政策の変更があることを示唆し、ショックを小さくしようとしたのではないだろうか。