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FRB連続利下げ 金利上昇の怪 〇〇指数がカギ
FRB連続利下げ 金利上昇の怪 〇〇指数がカギ
『利下げでも金利上昇の怪』
2024年12月20日日経夕刊に『利下げでも金利上昇の怪』が掲載されている。
『米連邦準備理事会(FRB)の連続利下げにもかかわらず、長期金利は上昇を続ける。不可思議な金利の値動きに「新債券王」も懸念を寄せる。「パウエル議長の記者会見から学んだことは今後、積極的な利下げサイクルは起こらないということだ」。「新債券王」の異名を持つ米資産運用会社ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック最高経営責任者(CEO)はこう断じる。長期金利の指標となる10年物国債利回りは一時、4.59%まで上昇した。9月以降、FRBが計1%の利下げに踏み切ったにもかかわらず、この間、長期金利は1%近く上昇した。ガンドラック氏によるとFRBの利下げサイクルで長期金利が上昇したのは1984年以降で初となる。
金利上昇の背景には、FRBの利下げ打ち止めが市場に織り込まれたことがある。12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)ではクリーブランド連銀のハマック総裁が利下げに反対。投票権を持たないメンバーも含めると、4人のFOMC参加者が利下げに否定的な立場を示した。パウエル氏も政策金利が「中立金利にかなり近づいている」とみる。従来の「中立水準に向けて金利を徐々に引き下げている」との表現を修正し、利下げの到達点が近いことを示唆した。実際、FOMC参加者の政策金利見通し(ドットチャート)から読み取れる2025年の利下げ回数は2回と、9月の見通しより2回減った。金利先物市場が織り込む利下げ回数は2回以下が8割超に達する。見送りも2割の確率で残る。(途中略)ガンドラック氏も25年半ばにインフレ圧力が高まり、25年にFRBが物価目標を達成する可能性は低いとみる。さらに原油価格が再び上昇に転じれば「25年の利下げは見送りになる」との考えを示す。(途中略)
トランプ氏は債務上限の撤廃について「全面的に支持する」考えを明らかにしている。政府債務が野放図に拡大するとの懸念が強まれば、長期金利に一段の上昇圧力がかかる。ガンドラック氏は金利の上昇を警戒し、現金比率を30%に引き上げている。バフェット氏ら著名投資家による相次ぐ現金信仰の高まりは、株式市場がさらなる嵐に見舞われる予兆かもしれない。』
この記事のポイントの一つは『米連邦準備理事会(FRB)の連続利下げにもかかわらず、長期金利は上昇を続ける。不可思議な金利の値動きに「新債券王」も懸念を寄せる。』とFRBの政策金利と長期金利が逆方向に動いたことだろう。
この点については、2024/09/24『「政策金利」と「市場金利」』のT-Modelコラムにおいて、
『先週2024/09/17の『市場の関心はいまだに、9月米連邦公開市場委員会の利下げ幅に集中する?』のT-Modelコラムにおいて、
『「フェデラルファンド金利は2年国債利回りに追随するだけだ」「フェデラルファンド金利と2年国債の利回りの間には大きなギャップがある。市場が50ベーシスポイントの利下げの可能性を話題にしているのも不思議ではない」と約1000億ドルを運用して、特に「債券王」と呼ばれるカリスマ投資家ジェフリー・ガンドラック氏は指摘する。
実際、2年国債利回りとFRB金利の差は8月-1.58%に低下し、過去40年間で最大となっている。言い換えれば、債券市場は、FRBが今後数カ月以内に急速に金利を引き下げると予想している。一部の市場関係者には、今回の利下げは98年のように予防的利下げで0.25%を予測する向きもあるが、当時の2年国債利回りとFRB金利の差は-0.95%にとどまり、過去最大の差となっている現在とは大きく異なっている点を見逃しているのではないだろうか。』と指摘した。
また同コラムのなかで、2016/12/19『市場が驚いた前回9 月の2回から3回に回数が増えた17 年FFレート見通し』のT-Modelコラムにおいて、
『いつもFOMCのたびに感じることだが、市場関係者がいつまでこのようなズレた分析を続けるのか?ということである。それはFOMCの「政策金利」であるFFレートに注目しすぎている点に違和感を感じるからである。FRBウォッチャーや債権の専門家、さらにマスメディアもFOMCメンバーによる金利予想を示す「ドットチャート」に注目し、「タカ派がどういう発言をした」「ハト派が優勢だ」などとの分析ばかり。まるでFRBが金利を決定しているかのように一喜一憂しているようにも見えるのだが・・。 FFレートはあくまでも政策金利に過ぎない。国債市場が未成熟の時代なら政策金利は重要だったが、現在のように債権市場が成熟化した時代では「政策金利」よりも「市場金利」が重要だからである。何故なら、「市場金利」に遅れて「政策金利」が動く傾向が強いからだ。』との古いコラムの指摘が今でも通用することを併せてご紹介した。
つまり、FOMCの「政策金利」の利下げが「市場金利」に遅れたことが最初の利下げ幅が「0.5%の大幅利下げ」の原因で、冒頭の記事で指摘するITバブル崩壊後の2001年とサブプライム問題のあった07年の時期も、今回と同様に「市場金利」に遅れたことが原因だろう。実際、「2年債利回り-FOMC政策金利」は2000年12月ピーク-1.37%、07年11月ピーク-1.49%と歴史的高水準であったことからも明らかで、それでも一部の市場関係者が指摘する「今回の利下げは98年のように予防的利下げで0.25%を予測する」を信じるのだろうか。
そして、このFOMC政策金利と連動しているのが「失業率」だが、政策金利が引き下げるから「失業率」が悪化するのか、それとも「失業率」が悪化するから政策金利が引き下げられるのか。「市場の大暴落は景気後退が原因ではなく、市場の大暴落が景気後退を生み出す原因となる。」が正しければ、政策金利が引き下げるから「失業率」が悪化することになるが、どうなるだろうか。』と指摘した。
24年9月にFOMCが初めて0.5%幅で政策金利を引き下げてから今12月で3会合連続トータル1.0%引き下げたが、逆に、長期金利は9月9日週3.66%をボトムに12月4.5%超と約7か月振りの水準に上昇し続けている。記事では『米連邦準備理事会(FRB)の連続利下げにもかかわらず、長期金利は上昇を続ける。不可思議な金利の値動きに「新債券王」も懸念を寄せる。』『ガンドラック氏によるとFRBの利下げサイクルで長期金利が上昇したのは1984年以降で初となる。』とあるが、単に、FRBの「政策金利」が「市場金利」に遅れているから起きた現象だろう。また、『FOMC参加者の政策金利見通し(ドットチャート)から読み取れる2025年の利下げ回数は2回と、9月の見通しより2回減った。』ことについて、パウエル議長はFOMCメンバーが次期政権の政策を織り込んで見通しを作成したと明かした。トランプ氏が掲げる関税大幅引き上げや移民の大量強制送還は輸入品価格の上昇や労働需給引き締めを通じてインフレ圧力を高める。ただ、T-Model理論『2年債利回り-FOMC政策金利』からすると、2年債利回り4.31%(24/12/23)に対し、FOMC政策金利4.5%で-0.2%と11月末-0.58%から縮小、ピークの8月末-1.58%からは大幅に縮小したため、あわてて利下げする必要性がなくなったためだろう。
では、今回の「市場金利」は何故、上昇したのか。米長期金利と連動している一つの指標は「CRB指数」で、来年以降、この「CRB指数」、つまり商品の動向が米長期金利を決定する可能性が高いことを示唆する。冒頭の記事で『ガンドラック氏も25年半ばにインフレ圧力が高まり、25年にFRBが物価目標を達成する可能性は低いとみる。さらに原油価格が再び上昇に転じれば「25年の利下げは見送りになる」との考えを示す。』と指摘。FOMCメンバーによる金利予想を示す「ドットチャート」をいくら分析しても、金利の先行きの見通しに役に立たないことは今回も証明されたが、それは『何故なら、「市場金利」に遅れて「政策金利」が動く傾向が強いからだ。』。「政府効率化省」のイーロンマスクがFOMCメンバーをリストラする日もそう遠くないかもしれない。