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NYダウを占うGDPナウは炭鉱のカナリア
NYダウを占うGDPナウは炭鉱のカナリア
2025年1-3月(第1四半期)米国GDPは22年以来のマイナス成長
2025年4月30日ブルームバーグニュースは『米GDP、2022年以来のマイナス成長-関税発動前に輸入急増』を報じている。
『米経済は2025年1-3月(第1四半期)に縮小。22年以来のマイナス成長となった。関税発動前の記録的な輸入急増や個人消費の低調が響いた。トランプ米大統領の貿易政策がもたらす波及効果の最初の兆候が示された。
キーポイント
実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率0.3%減 市場予想は0.2%減 2024年10-12月(第4四半期)は2.4%増
個人消費は1.8%増23年第2四半期以来の低い伸び 市場予想は1.2%増
GDP成長率は過去2年の平均である約3%を大きく下回った。純輸出のGDP寄与度は5ポイント近いマイナス。過去最大のマイナス寄与となり、企業が広範な関税の発動前に商品を確保しようと急いだ動きを浮き彫りにしている。連邦政府による支出の落ち込みもGDPを圧迫した。GDPの3分の2を占める個人消費は23年半ば以来の低い伸びにとどまったものの、市場予想は上回った。サービス支出の幅広い増加と非耐久財の持ち直しに支えられた。(途中略)
輸入は年率換算で41.3%増加し、約5年ぶりの大幅増を記録。これらの商品やサービスは米国内で生産されていないため、GDPから差し引かれる。貿易赤字の急拡大は4-6月(第2四半期)に反転すると、エコノミストらはみている。今後に目を向けると、関税引き上げは供給ショックを引き起こし、企業活動の抑制や需要減退につながると多くのエコノミストは予想している。報復関税も輸出を抑制し、年末にかけて厳しい環境をもたらす可能性がある。米国がリセッション(景気後退)に陥る確率はほぼ五分五分とみられている。』
2025/03/10『アトランタ連銀の「GDPナウ」が示唆する「トランプセッション」?』のT-Modelコラムにおいて、
『予測精度の高さで定評のあるアトランタ連銀の「GDPナウ」は3月3日、1~3月期改定値が年率でマイナス2.8%とリセッション域に転落したことを冒頭の記事で「トランプセッション」と名付けている。トランプ関税を警戒した駆け込み輸入による1月貿易収支の大幅悪化したことに加え、1月小売り統計名目で前月比0.9%減と弱くなり始めた1月消費データを反映した。1月は米国全土を寒波が襲い、またカリフォルニアでの大規模な山火事も消費を抑制した可能性があるため、この分は一過性の可能性もある。ただ、これまで米国の個人消費を支えてきた住宅価格と株価上昇による巨大な「資産効果」が縮小した影響も大きいかもしれない。
トランプ大統領の関税政策以降、株価の頭が重くなり始めており、市場では、株価を重視するトランプ米大統領は不安定な相場を受けて関税政策を見直すと期待する向きもある。ただトランプ氏は6日、追加関税の救済措置を発表したことについて「相場と何ら関係ない。相場を見てすらいない。(関税によって)長期的には米国は強くなる」と強調した。マーケットの声を重視するとみられたヘッジファンド出身のベッセント米財務長官も関税を重要施策に位置付け、6日のNYで開かれた講演で、関税引き上げによる物価上昇は「1回限りの価格調整」だと述べ、大きな問題にならないとの考えを示した。市場では期待していた「トランプ・プット」は「トランプ・リスク」の失望に変わり始めている。
T-Modelでは過去、このアトランタ連銀の「GDPナウ」と近い経済データを調べたところ、「ミシガン大学消費者信頼感指数」との連動性が高いことが分かっている。先行指標の現在の「GDPナウ」が-2.8%に急落したことから3月以降の「ミシガン大学消費者信頼感指数」を予測すると25年2月64.7から45~50の水準に落ち込むことを示唆していることになる。そして、T-Model理論『「ミシガン大学消費者信頼感指数」とNYダウ(前年比)の連動性』からすると、仮に、「ミシガン大学消費者信頼感指数」が45まで落ち込んだ場合、NYダウは前年比約-20%下落することを示唆する。ちなみに、1年前の24年3月末のNYダウ39807ドルの-20%は31845ドルと試算されるが、どうなるだろうか。突然の「トランプ・プット」への豹変がなければ覚悟しておくべきNYダウの水準として頭の片隅においておいた方が良いかもしれない。』と指摘した。
アトランタ連銀の「GDPナウ」は2025年1-3月(第1四半期)GDPが22年以来、3年振りのマイナス成長に陥ることをすでに2ヵ月前から予測し、「予測精度の高さ」を改めて証明したかたちである。その「GDPナウ」は4月29日まで-2.7%と推移していたが、4月30日+2.4%以降、プラス圏で推移していることから、2025年4-6月(第2四半期)GDPはプラス成長となる可能性を示唆する。
そして、今回改めて「GDPナウ」の凄さに気づいたことは、「GDPナウ」とNYダウが連動していることである。「GDPナウ」は25年2月5日+2.9%と25年のピーク→2月28日-1.5%と初のマイナス圏入りした→25年4月1日-2.8%とマイナス幅が最大→4月30日+2.4%とプラス転換と推移しているが、NYダウは2月5日6061ドル→2月28日5954ドル→4月1日5633ドル(最安値4月7日4835ドル)→4月30日5569ドルとほぼ株価を先取りしている。再び、「GDPナウ」が崩れ始めた時はリバウンド終了のサインとして注意が必要だろう。
一方、前述のコラムで指摘したように、「GDPナウ」と連動性の高い「ミシガン大学消費者信頼感指数」は4月52.2まで落ち込み、これも「GDPナウ」は示唆した通りである。ただ、T-Model理論『「ミシガン大学消費者信頼感指数」とNYダウ(前年比)の連動性』はまだ現実化していないが、「NYダウが前年比約-20%下落」の可能性は消滅したとは考えていない。トランプ政権の態度軟化で始まった現在の戻り相場では関税の引き下げが進むという楽観論も一部にあるが、米政権の譲歩は鈍く、再び悲観に振れる展開も予想されるからである。それをいち早く伝えてくれるのが「GDPナウ」で「炭鉱のカナリア」として目が離せなくなってきている。