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T-model理論が示す 世界的な金融危機 水面下で進行中?
T-model理論が示す 世界的な金融危機 水面下で進行中?
内閣府は24年8月8日、「2024年7月景気ウオッチャー調査」を発表。同指標は株価の1~2ヶ月先行指標で政府統計では最も有効。
2024年7月「街角景気」の「現状判断DI」は前月比+1.0%Pの48.3%(原数値)と2ヵ月連続で改善。ただ、実態を示す前年比ベースは-5.8%と6ヵ月連続でマイナス圏に陥り、かつ4ヵ月連続「-5%超」は「コロナショック」の20年2月~6月の5か月連続以来。水準も景気の別れ目となる50%を3か月連続割り込んだまま。円相場が6月末の1ドル=160円台から7月末150円台へ円高方向に進み、円安に対するコメントは5~6月より減少、円安や物価高に対する防衛意識などがマイナスの影響を与えている一方で、人の流れの活性化や長期休暇がプラスの影響を与えている。暑さに関するコメントが急増し、「7月に入り、梅雨明けと同時に猛暑が続いており、季節商材の動きがよい。また、国内需要も定額減税、ボーナス商戦で高額の耐久消費財の動きもよい。インバウンドも好調を維持している(家電量販店)。」の前向きなコメントの一方、「気温が高くなったことで外出が少なくなっているため、人出が悪く販売量が減少している(商店街)。」とマイナス面を指摘する声も相次いだ。尚、メディアでは、2016年10月分から発表を開始した「季節調整値」を使用しているが、現状判断DIは前月比+0.5%Pの47.5%と2か月連続で改善、ただ、景気の別れ目となる50%を5か月連続で下回り、原数値と同じ方向に落ち着いてきた。2024年2月に「驚いたのは、24年1月分から現状判断DIを23年9月49.9→50.7、10月49.5→50.7、11月49.5→50.8と突然50以上に上方修正していたこと。50以下では不都合があったのだろうが、これは改ざんに近く、色々な統計でこのようなことが行われている可能性には注意が必要だろう。」と指摘した。
T-Modelにおいて「景気判断」に最も重要なのは移動平均との乖離幅で、24年1月-2.8%→2月+0.5%→3月+2.3%→4月+0.0%→5月-2.9%→6月-1.8%→7月-0.9%と推移。3か月連続でマイナス圏に陥っていることから景気後退を示唆している。尚、内閣府は24年4月に「穏やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる」と23年9月以来の下方修正をしたが、それを据え置いた。
2─3カ月先を見る「先行き判断DI」は前月比-0.6%Pの48.6%と、2ヵ月振りに悪化。実態を示す前年比ベースも-4.4%Pと、5ヵ月連続でマイナス圏に陥り、また、景気の別れ目の50%も4ヵ月連続で割り込んでいる。「高額品の動きが引き続き堅調であり、夏ボーナス、今春の賃上げ効果が徐々に出てきていると見受けられる。また、8月から10月には政府による電気・ガス代の補助金が再開するため、景気はややよくなるとみられる(百貨店)。」と前向きなコメントの一方、「暑さが続き、秋物需要に影響があるとみている(衣料品専門店)。」「金利引き上げによる住宅ローンの金利上昇で消費者心理に懸念(近畿の住宅販売会社)」とマイナス面を指摘する声もある。尚、「季節調整値」は前月比+0.4%Pの48.3%と2ヵ月連続で改善。ただ、景気の別れ目となる50%を4か月連続で割り込み、原数値と同様に実態は改善ではなく低迷している。前述のとおり、24年1月に突然、政府の景気判断に影響する「現状判断DI」のみが23年9月分から3か月分上方修正されたが、先行きDIは修正されなかった。また、「先行き判断DI」-「現状判断DI」が24年1月+4.5%P→2月+3.2%P→3月-0.5%P→4月-0.9%P→5月+0.9%P→6月+1.9%P→7月+0.3%Pと3か月連続でプラス圏に浮上している。ただ、23年が23年7月~12月まで「6か月連続」マイナス圏、22年が22年3月~7月の「5か月連続」マイナス圏、22年9月~12月の「4か月連続」マイナス圏と、コロナ以降、同指標の連続マイナス圏の時期が増えている。通常、「先行き判断DI」・「現状判断DI」の「逆転現象」は「先行き」に期待が持てない状態が続いていることを示す。
一方、関東地区の先行きDI(家計関連)は前月比-0.1%P の48.6%と2ヵ月振りに悪化。実態を示す前年比ベースでは-4.1%Pと5ヵ月連続でマイナス圏に陥り、景気の別れ目の50%を4ヵ月連続で割り込んでいる。また、全国先行きDI(家計関連)48.0%であることから、2ヵ月振りに関東地区が全国を上回り、その結果、「関東-全国の差(移動平均ベース)」は、23年6月-1.2%→7月-1.0%→8月-0.5%→9月-0.3%→10月-0.2%→11月-0.2%→12月-0.0%→24年1月-0.2%→2月-0.2%→3月-0.2%→4月-0.1%→5月+0.1%→6月-0.1%→7月+0.2%と推移、24年5月に22年1月以来、2年4か月ぶりにプラス圏に浮上した後はプラス圏とマイナス圏を行ったり来たりしている。同指標は関東地区が地方に比べ世界の金融危機に左右されやすい経済構造になっていることを利用して発見したT-Modelオリジナル理論。過去、07年の「サブ・プライムローン問題」、08年の「リーマン・ショック」、11年「欧州債務危機」、15~16年の「チャイナ・ショック」、2020年「コロナショック」など世界的な金融危機の局面で大きく悪化している。世界的な金融危機は水面下で起き続けていることを示していたが、それを表面化させないように覆い隠しているのが現在の株高政策。そして、「円キャリートレード」を膨らますことで「人工的円安」を作り、日本株を牽引してきた。ただ、7月から始まった「円キャリートレード」の巻き戻しは一過性の混乱ではなく、今後、何度も起こる可能性のある「混乱」で、それは今後世界の金融市場に内在するリスクを浮き彫りにすると同時に、今後はより深刻な構造的問題を表面化させる兆候として捉えるべきだろう。過去、「円キャリートレード」が膨らんだ98年には「LTCM危機」「ロシア危機」が起こり、07年は「リーマンショック」に繋がったからである。
また、T-Modelオリジナルの同指標は10ヶ月先の日本の株式市場を占う上でも重要な指標。同指標は22年11月を戻りのピークに、23年4月-1.9%と、過去最悪だった12年12月-2.1%に迫る水準まで急落。19年7月ピーク+1.2%→20年4月ボトム-1.6%、20年11月ピーク+0.7%→21年6月ボトム-1.6%と同様に、コロナショック以降、3度目の「危険な時間帯」が続いていたが、前述の通り、逆に、「人工的円安」で株価を吊り上げる不自然な「株価操縦」によって危機を覆い隠しているかのようにも見える。実際、同指標は25年5月+0.2%まで改善方向を示す一方、逆に、株価は今回の株価暴落で6月を史上最高値に日経平均は過去最大の下落幅で、一時、-26.5%の暴落となった。また、TOPIXも-20%の暴落を演じ、同指標とは逆方向で動いていることが不自然で「株価操縦」の結果と言えるのではないだろうか。
以前からセミナーなどで『T-Model分析では、今回のバブルは「2つのバブル」が形成されており、22年1月から始まった米国の株価・債券市場の暴落は「コロナショック」後に作られた2つ目の「コロナバブル」が崩壊しただけで、T-Model理論では、現在は逆イールド(10年-2年)を深堀りにすることで金融緩和状態を作りリバウンド相場を演出している。』と分析し、今回の株価暴落がその始まりだが、続きは米国の11月の大統領選挙が終了してから再開される可能性が高いのではないだろうか。
以前から紹介してきたFRBが重視する『10年-3か月』の「逆イールド」の連続日数は7月末で633日と、大恐慌前の700日に次いで2番目の長さになった。
2024/04/22『500日を超えた「10年-3ヶ月」の「逆イールド」は何を示唆するのか?』のT-Modelコラムにおいて、
『米国債10年-3か月の「逆イールド」も24年3月末で511日と500日を超えているが、500日を超えたのは過去、1929年、2008年、1974年の3回しかなく、いずれも株価は50%以上の暴落に発展している。「逆イールド」の持続期間と株価の下落率は比例関係にあり、仮に、FRBが金利を下げると、過去最長の「逆イールド」は解消して、それが株価暴落を招き、そして、大不況に陥る恐れがある。2020年以降の消費者物価の急上昇も、22年からの沈静化もすべてコロナショックを契機としたQEと、その後のQT、つまりマネーの急増と減少が原因であり、政策金利は関係ない。むしろ、政策金利の引き上げは物価を押し上げる要因で、それにも関わらず消費者物価の下げ止まりを理由に「利下げ先送り」を続けようとしているのである。これは少なくとも11月の米国大統領選挙までは株価暴落も、景気後退も起こすことができない現政権の「逆イールド」継続の延命策に過ぎず、仮に、大統領選挙まで「逆イールド」を継続させると「721日」となり、大恐慌前の「700日」を上回り過去最長となる。それは、1930年代の「大恐慌」の再来が避けられないことを示唆することになるが、「逆イールド」が「500日」を超えた現時点で今更、止めても経済への大激震は避けられず、このまま突き進むしかないのだろう。
では、ここまで理解できた我々は何をすべきか。近未来に起こるであろう大地震と同様に、世界経済崩壊の大激震にも準備を怠らないことが重要である。』と指摘した。
また、2ヵ月前の「2024年5月景気ウオッチャー調査」では、
『「逆イールド」がこれまで戦後最長だった1978年8月~80年5月には1980年大統領選挙が実施され、共和党のロナルドレーガンが当選し、ジミーカーター民主党政権から政権移行した。2006年8月~07年2月の「逆イールド」は2008年大統領選挙が実施され、民主党バラク・オバマが当選し、ジョージWブッシュ共和党政権から政権移行、その前2000年2月~2000年12月の「逆イールド」は2000年大統領選挙が実施され、共和党のジョージWブッシュが当選し、ビル・クリントン民主党政権から政権移行した。過去の例だと、大統領選挙と「逆イールド」が重なるケースは「逆イールド」による歪からか、「政権交代」が起きやすく、戦後最長の「逆イールド」と重なる今回の2024年大統領選挙も「政権交代」が起こる可能性を示唆する。そして、もう一つ注目しているポイントは、2024年11月の大統領選挙まで「逆イールド」を続けられるかということである。戦後最長の「逆イールド」だった1980年の年も大統領選挙前の5月に「逆イールド」が途切れているからである。』と指摘した。
5月リアルセミナーで予測した「7月急落調整」が今回、現実化したわけだが、これは米国の大統領選挙の年である2020年「コロナショック」に似ているのではないかと想定している。2024年も米国の大統領選挙だからで、注目はどうやって早期に株価を底入れさせ、上昇させるかだが、2020年のようにQEを使うことになるのだろうか。