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ドル円は2011年を中心に「左右対称」?
ドル円は2011年を中心に「左右対称」?
2024年3月25日ブルームバーグニュースで『「今の円安の動きは明らかに投機が背景にある」-151円台で神田財務官』が報じらている。
『神田真人財務官は25日午前、為替市場で円安が進んでいることに関して、経済のファンダメンタルズに沿っておらず「明らかに投機」との見解を示した。「常に準備はできている」と述べ、介入も辞さない姿勢を明確にした。財務省内で記者団に語った。(途中略)
米商品先物取引委員会(CFTC)の19日までのデータによると、ヘッジファンドは21年以来一貫して円ショートを維持しており、日本銀行が政策を正常化しつつも緩和的な姿勢を維持するとの期待から、円ショート取引はここ数カ月も人気が高い。神田発言後に一時円高に振れたものの、151円台で推移。約34年ぶりの安値に接近している。(途中略)神田財務官は円安の背景にある日米金利差は明らかに縮小しており、「今後もさらに縮小していくことが期待される」と説明。介入に踏み切る際の水準については「意識をしていない。何よりも過度な変動であるかどうか、それが経済にどれだけの影響を及ぼしていくかを総合的に勘案している」との見解を示した。
日銀は先週の金融政策決定会合でマイナス金利を解除し、17年ぶりの利上げを決めた。イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の廃止や上場投資信託(ETF)の新規購入の停止も決定し、2013年4月以来の大規模な金融緩和政策は転換点を迎えた。一方で、米連邦公開市場委員会(FOMC)は、2024年の利下げについて0.25ポイントを3回という従来予想を据え置いた。(途中略)』
日本銀行が3月18-19日の金融政策決定会合にて「マイナス金利の撤廃」「長短金利操作(YCC)」「上場投資信託(ETF)などリスク資産の買い入れ」などアベノミクス以降の大規模な金融緩和策をすべて終了した。ドル円は発表前に149円台前半で推移していたが、発表後には1日で2円以上も円安・ドル高が進み、対ユーロでもリーマンショック前の2008年8月以来となる165円35銭までユーロ高円安に振れた。「利上げは円高」というセオリーに反した円安進行について、市場では、会合前に既に織り込み「材料出尽くし」とか、日銀による追加利上げが当面ないとの見方が背景などと、いつもの後講釈に終始している。荒治療ともいうべき「金融政策の正常化」に関わらず、円安に振れる不自然な動きは市場に衝撃が走らないよう予め「人工的」に株高・円安を演出した可能性が高いのではないだろうか。
それよりも冒頭の記事で重要なポイントは『2013年4月以来の大規模な金融緩和政策は転換点を迎えた』だろう。日銀の植田和男総裁は決定会合後の記者会見で、2013年4月から約11年続いた異次元の金融緩和について、「役割を果たした」と説明しており、日銀の「バズーカ緩和」からスタートした「アベノミクス」が終了宣言をしたことを意味するからである。政府は3月22日に発表した3月の月例経済報告で、政策態度を示す記述から、第2次安倍内閣の経済政策「アベノミクス」の3本の矢に関する文言を削除したこともそれを象徴している。
では、為替相場の観点で「アベノミクス」を振り返ると、2011年に史上最安値まで下落していたドルインデックスを上昇させて、危うくなっていた基軸通貨ドルをサポートするために人工的な円安によって支援したものと考えられる。第1期目の円安局面は、12年9月安値77.93円→15年6月高値125.57円まで約47円幅の円安、その後、16年8月安値100.17円まで25円幅の調整局面を経て、第二期の円安局面は2020年12月安値103.29円→23年11月高値151.53円まで約48円幅の円安となっている。どちらもほぼ同じ円安幅であることが人工的な円安を示唆するが、同時に、目先は一度、達成感がでてきている水準ということになる。
また、もっと長い期間でドル円の推移を振り返ると、ITバブル前の1998年8月11週147.68円を記録したが、既にその水準を2023年~2024年に超えている。前後の通り、ドル円の最安値はリーマンショック後の2011年11月24日週75.79円で、1998年→2011年までは円高・ドル安局面の13年間、逆に、2011年からは円安・ドル高局面が13年目を迎え、2011年を中心に「左右対称」となっているからである。つまり、2024年は一旦、円安がピークを付けてもおかしくない時間帯に入っていることを示唆している。神田財務官の「介入も辞さない姿勢」とあるが、日本単独で「介入」を決めることはできず、すべては日米の予定調和でこのような発言となっていることは認識しておくべきだろう。