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不況隠蔽?米国雇用者数 失業率の闇
不況隠蔽?米国雇用者数 失業率の闇
2024年7月6日ロイターは『米6月雇用20.6万人増、失業率4.1%に上昇 賃金伸び減速』を報じている。
『米労働省が5日発表した6月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は前月比20万6000人増と、健全な伸びを示した。ただ、政府部門が増加分の3分の1以上を占めたほか、失業率は約2年半ぶりの高水準に達した。賃金の伸びも鈍化し、労働市場の緩みが浮き彫りとなったことで、米連邦準備理事会(FRB)が年内に利下げを開始する可能性が強まった。失業率は前月の4.0%から4.1%に上昇し、2021年11月以来の高水準となった。昨年7月に付けた低水準の3.5%から0.6%ポイント上昇した計算となる。(途中略)
5月の非農業部門雇用者数は27万2000人増から21万8000人増に、4月分は16万5000人増から10万8000人増にそれぞれ下方改定され、両月の雇用者数は計11万1000人減少した。今年上期の雇用者数の伸びは、平均で月間約22万2000人となった。
時間当たり平均賃金は前月比0.3%上昇。5月(0.4%上昇)から減速した。前年比では3.9%上昇で5月(4.1%上昇)から鈍化し21年6月以来の低い伸びとなった。上昇率が3.0─3.5%であればFRBの2%のインフレ目標と一致するとされている。(途中略)金融市場が織り込む9月17━18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ確率は約72%。12月に2回目の利下げが実施される可能性があるという観測も高まっている。業種別では、政府部門が7万人増、医療関連が4万9000人増で、全体の伸びを主導した。建設も2万7000人増加した。(途中略)』
先週発表された「非農業部門雇用者数」と連動性の強い「米国ISM非製造業総合景況指数」は2024年6月48.8と、市場予想(52.5)と5月結果(53.8)を下回り、好不況の分かれ目となる50を2ヶ月ぶりに下回った。コロナ期の2020年5月以来、約4年振りの低水準に落ち込んだことで、同指数と「非農業部門雇用者数」との乖離はさらに大きくなっている。
「雇用統計は2つの調査」があり、「事業所ベース」と「家計調査ベース」のことで、雇用者数に乖離が起きていることを指摘した。一般的に公表されているのは「事業所ベースの雇用者数」で、24年1月1億5756万人→6月1億5863万人と+107万人増の一方、「家計調査ベースの雇用者数」は、24年1月1億6115万人→6月1億6119万人と+4万人増にとどまり、「米国ISM非製造業総合景況指数」に近い結果となっている。
冒頭の記事に「政府部門が増加分の3分の1以上を占めた」との指摘があるが、以前からT-Modelが指摘してきた通り、「過去最高の政府部門就業者」と「過去最高の移民の就業者」で実体よりも嵩上げしている。6月の失業率が4.1%と約2年半ぶりの高水準に達し、また非農業部門雇用者数が4月分17.5万人増(速報値)→16.5万人増(改定値)→10.8万人増(確報値)と速報値から-6.7万人下方修正、5月分も27.2万人増(速報値)→21.8万人増(改定値)と速報値から-5.4万人下方修正されている実態はそろそろ「改ざん」にも限界を迎えていることを物語る。ちなみに、「速報値」から「確報値」の下方修正分は、2023年年間で-33.8万人だったが、2024年は1月~4月の4か月で既に-19.6万人に膨らんでいる。いかに毎月の米雇用統計が不正確な速報値を発表して嵩上げしているかを証明する。
最後に、この「失業率」の先行きを占う上で重要なのが「2年先行させた住宅販売の前年比」である。その「2年先行させた住宅販売の前年比」は25年1月-36.4%と最悪の落ち込みとなっていることから、過去のパターンでは、その時期に向けて「失業率」が急速に悪化することを示唆しているからである。実際、6月の「失業者数」は前年比+14%増の681.1万人に増加し、直近で最も少なかった23年4月565.7万人からは既に+20%増。過去、「失業者数」が前年比ベースで2ケタの伸びが表れると大きな不況に発展していることが多いが、米国は既に、その段階に入り始めたことを示唆している。そして、この「失業者数」は失業率と連動していることからより注目度が高まることだろう。米国第2位のカリフォルニア州の失業率は24年5月5.2%と、直近でボトムだった22年8月4.0%からは大きく悪化しているが、カリフォルニア州は過去、全体の「失業率」の先行指標となっている点は注意が必要だろう。