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円安論者が指摘する ファンド「爆買い」も円高鈍足
円安論者が指摘する ファンド「爆買い」も円高鈍足
2025年3月1日日経新聞では『ファンド「爆買い」も円高鈍足~強いドル需要が打ち消し』が報じられている。
『円相場が2カ月ぶりに1ドル=150円を突破して1週間。投機筋による円買いは歴史的な水準にまで膨張しているものの、円高・ドル安のペースが加速する気配は乏しい。金利差を手掛かりにした投機的な円高圧力が、絶大なドル需要に打ち消されているためだ。「中長期的には1ドル=155~160円程度の円安に戻る」「日銀の利上げ観測が高まりきった後は160円を超える円安もあり得る」「デジタル赤字など新たな円売り要因があり、しばらく140円台で停滞したあと円安が再開する」。為替ディーラーは足元の円高進行は一時的と口をそろえる。
ここ数週間の外為市場は、ヘッジファンドなどを含む投機筋による円買い圧力にかつてないほどさらされていた。米商品先物取引委員会(CFTC)が集計する投機筋(非商業部門)による円の買越額は6万枚と、ほぼ過去最高水準に達した。(途中略)投機筋の動きを勘案すれば足元の円高進行のペースは緩やかといえる。(途中略)円高進行にブレーキをかけているのは非投機の円売りの強さだ。(途中略)
こうした円安シナリオに死角はないのか。指摘される国内勢による円買い需要が強まる可能性だ。(途中略)国内勢の対外資産は23年末時点で1488兆円に達する。為替ヘッジには将来的な円高による収益の目減りを防ぐ効果がある。日銀の利上げで為替ヘッジが増えるとの見方もある。(途中略)もっともこうした「ヘッジの円買い」の動きはまだ多くは見られない。歴史的な「超円安局面」は終わらないかもしれないーーー。市場参加者の間で広がっている。』
まず、この記事では「デジタル赤字」で円安が続くという見方をする市場関係者の意向が色濃く出た記事と言えるのではないだろうか。円安論者からすると「投機筋が過去最大レベルの円買いで円高が進まない」といった点を誇大に指摘したかったのだろう。確かに、ドル円の投機筋ネットポジション(買い-売り)は2月24日週95980枚で、2005年9月以降、過去最高水準に達しているが、移動平均ベースでは、2月24日週23664枚と、昨年の「令和のブラックマンデー」時に約140円まで円高が進んだときに記録した投機筋ポジションは24年10月7日週55302枚でまだ半分にも達していない。
そして、この円安論者を代弁したような記事に抜け落ちている大きな問題点は「円キャリートレード」の視点である。一切、その「円キャリートレード」には触れられていないが、現在の為替相場、特に、ドル円相場ではその視点がなければ投機筋ポジションの動向など説明できないからである。具体的には、投機筋ポジションが2007年6月と2024年7月に過去最高の円売りポジションを記録した後、2008年3月と2024年9月に一気に「円買いポジション」に転換した理由をどう説明するのだろうか。
T-Model理論『円キャリートレード指数』は3月3日週1.4倍で+1σを超える高水準な上、22年2月28日週1.17倍からの上昇トレンドラインをようやく割り込み、まさに、これから円キャリートレードの巻き戻しが始まろうとしている段階である。過去の例では、今後、大規模な円キャリートレードの巻き戻しが起きてT-Model理論『円キャリートレード指数』が下落すると大規模な円高が進行するパターンが想定できるが、今回は何をきっかけに円キャリートレードの巻き戻しが起きるかに注目が集まる。2011年に史上最安値水準まで落ち込んだドルインデックスを支える目的で「円キャリートレード」を利用して作ってきた「人工的円安バブル」をたまたま増えてきた「デジタル赤字」が円安の原因などと大きな勘違いをしている市場関係者は「為替ヘッジ」を余儀なくされ、皮肉にもそれが円高を加速する原因となる日が近づいているのかもしれない。