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第374回:8月米雇用統計16.2万人増加 本当に強いのか?

第374回:8月米雇用統計16.2万人増加 本当に強いのか?

8月米雇用統計は16.2万人増加し全予想上回ったが、米国の雇用は本当に強いのか?

26年9月4日ブルームバーグニュースは『米雇用統計、8月は16.2万人増加し全予想上回る-失業率は4.1%』を報じている。

『8月の米雇用統計では、雇用者数が市場予想を上回って増加し、失業率は横ばいだった。労働市場には従来考えられていた以上の勢いがあることを示唆した。

今回の統計は、イラン戦争を巡る不透明感やインフレ圧力にもかかわらず、労働市場が堅調さを維持していることを示唆している。米連邦準備制度理事会(FRB)当局者は利上げを後押しする材料と受け止める可能性が高いが、15-16日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での政策判断では、11日に発表される消費者物価指数(CPI)が重要な鍵を握る。(途中略)

雇用統計の発表後、トランプ大統領は「素晴らしい新議長を迎えたFRBは賢明にならなければならない。今度こそ愛国者になれ」とソーシャルメディアに投稿し、利下げを求めた。「高金利によって米国は極めて不公平な不利益を被っている。そんなことは許さない!」とも述べた。(途中略)

就業中か求職中の人が人口に占める割合を示す労働参加率は61.6%へ小幅上昇し、約1年ぶりの改善となった。上昇は若年層と高齢層に集中した。「プライムエージ」と呼ばれる25-54歳の働き盛りの層では83.4%で横ばいだった。2026年の労働参加率低下は、人口の高齢化やトランプ政権による移民取り締まり強化などを一部反映しており、失業率を低水準にとどめる一因となっている。(途中略)「U6」と呼ばれる不完全雇用率(フルタイムでの雇用を望みながらもパートタイムの職に就いている労働者や、仕事に就きたいとは考えているものの積極的に職探しをしていない人が含まれる)は7.7%と、2025年6月以来の低水準となった。黒人の失業率は6%と、25年2月以来の水準に低下した。失業期間の中央値は11.4週間に増加した。(途中略)

ウォーシュFRB議長は先週、ワイオミング州ジャクソンホールでの講演で、労働市場は「かなり安定している」とし、「完全雇用と整合的だ」と述べた。』

8月米雇用統計は市場予想を上回る内容だったが、冒頭の記事でT-Modelが注目したのは『就業中か求職中の人が人口に占める割合を示す労働参加率は61.6%へ小幅上昇し、約1年ぶりの改善となった。』である。

「労働参加率(労働力率)」とは15歳以上人口のうち労働力人口(働いている人+探している人)が占める割合で、8月の「労働参加率」は約1年振りに改善したものの、コロナショック時以来、約5年ぶりの低水準まで低下しているからである。

8月の米雇用統計のように「失業率」が低いと米国の雇用は「まだ強い」と判断しがちだが、表面上の「失業率」の低さは、労働市場の強さを表しているのでなく、労働市場から退出する人の増加に支えられている可能性もある。同じ「失業率低下」でも、労働参加率が下がらずに職を見つけて行列を抜けた「良い低下」と職探しを諦め、働けない人が残ったまま労働参加率も一緒に低下する「悪い低下」がある。現在の米国は「労働参加率」が低下し続ける後者の可能性も否定できない。FRBがこの局面でインフレだけを見て引き締めを続ければ、雇用の弱さはさらに見えにくい形で広がる可能性がある。

つまり、雇用統計で一番怖いのは、失業者が増えることではなく、失業者として数えられない人が増えることなのである。トランプの移民対策などもあり、実態は掴みにくくなっているが、本当に見なければいけないのは「仕事を失った人」ではなく「仕事を探すことを諦めた人」。そして、それが高齢化による引退、育児・介護、進学などの「構造的な理由」で増えているのか、それとも景気悪化要因で増えているのかを見極めることだろう。企業が求人を絞り、採用を先送りし、AIや自動化で人員を増やさなくなれば、働きたい人が仕事を得にくくなるからである。

「失業率」と「労働参加率」から本当の「失業率」を推計したのが、T-Model理論『米失業率-米労働参加率』である。同比率と「失業率」はほとんど同じ動きをしているが、リーマンショックのあった2009年以降、両指標は大きく乖離している。考えられるのは、「失業率」の推計基準を変えて、2009年以前よりも低く見えるかたちにした可能性がある。T-Model理論『米失業率-米労働参加率』をベースに2009年以前の基準で、現在「失業率」を推計すると、約8%に達していることになる。仮に、この推計が正しいとすると、FRBがインフレだけを見ての政策金利の引き上げは正しくないことになるが、9月15日~16日のFRBのFOMCで、ケビン・ウォーシュ新FRB議長はどのような判断をするのか。そして、我々は米国の雇用は「まだ強い」などといった楽観論を修正すべき時期を迎えているのではないだろうか。

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