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米9月の雇用統計 景気の実態が〇〇従業員数で露呈
米9月の雇用統計 景気の実態が〇〇従業員数で露呈
「本塁打」級の米9月雇用統計?
米労働省が10月4日発表した9月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は前月比25万4000人増で予想(14万人増)を大幅に上回り、過去6カ月で最大の伸びとなった。失業率も改善し、経済がなお勢いを維持している状況が示されたことで、米連邦準備理事会(FRB)が年内に大幅利下げを実施する公算は小さいとみられる。
失業率は4.1%で、前月の4.2%から低下した。時間当たり平均賃金は前年比4.0%(市場予想3.8%)、前月比も0.4%と予想を上回り、それぞれ上昇した。9月の週平均労働時間は34.2時間だった。
2024年10月5日ブルームバーグニュース『「本塁打」級の米雇用統計、FRBの肩の荷軽減-労働市場の懸念後退』を報じ、
『9月の米雇用統計が予想を上回る強い内容となったことで、労働市場を巡る懸念が後退し、金融当局には今後数カ月に一段と漸進的なペースで利下げを続ける余地が生じた。当局へのプレッシャーは軽減された形だ。
JPモルガン・チェースの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・フェローリ氏が「本塁打」と呼んだ統計発表を受け、金融当局が9月の0.5ポイント利下げに続き、11月6、7両日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合でも大幅利下げを検討するとのエコノミストや投資家の観測はほぼ直ちに減退した。以前は大幅な追加利下げを予想していたフェローリ氏だが、4日の顧客向けリポートでは、「今日の発表で米金融当局の仕事も比較的容易になるだろう。われわれは現時点で0.25ポイントの利下げ路線を予想している」とコメントした。
このほかにも、バンク・オブ・アメリカ(BofA)の米国担当シニアエコノミスト、アディトヤ・バビ氏は11月の利下げ幅見通しを0.25ポイントに切り替え、BNPパリバの米国担当シニアエコノミスト、エレーナ・シュルヤティエバ氏も「落ち着いたペース」での利下げを見込むとしている。 シュルヤティエバ氏は顧客向けリポートで、「9月の雇用者数の大幅な伸び加速や失業率の低下は、過去数週間の米経済指標で示された広範な力強さと相まって、底堅さを新たに裏付けるサインとなり、ソフトランディング(軟着陸)の根拠を強める」との見方を示した。』
実は、米労働省が24年6月7日発表した5月の雇用統計も非農業部門の就業者数が前月から27万2000人増え、18万〜19万人の事前予想を上回った。この時にご紹介したのが2024年6月7日ブルームバーグニュース『米雇用者数は大幅な増加、賃金伸び加速-米利下げの予想後ずれ』で、
『雇用統計は2つの調査から構成される。1つは雇用者数と賃金のデータを作成するための事業所を対象とした調査。もう1つは失業率を算出するための家計を対象としたより小規模な調査だ。家計調査でも独自の雇用者数のデータを算出している。同ベースでの雇用者数は5月に40万人余り減少し、減少幅は今年最大となった。家計調査ベースの雇用者数と事業所調査での雇用者数との乖離(かいり)が大きくなっており、エコノミストの間ではどちらが労働市場に関するより正確なシグナルなのかという議論が起きている。(途中略)
バイデン大統領は再選を目指す選挙キャンペーンにおいて、労働市場の強さを繰り返しアピールしており、失業率がここ2年余り4%を下回ってきたことにも触れてきた。有権者の経済に対する見方が後退し、長引くインフレが重くのしかかる中、今回失業率が予想外に上昇したことは、バイデン政権にとって新たな難題となる。』
つまり、複数職雇用者の増加が押し上げたことを指摘したが、結果的に2ヵ月後に発表された5月非農業部門雇用者数の確定値は21万6000人で、当時の予想18万〜19万人を若干上回る程度だった。
今9月の非農業部門雇用者数は、複数職雇用者が+12.1万人増、政府部門+3.1万人、など正社員が+41.4万人と、5月の正社員-62.5万人とは大きく異なり、通常の事業所ベース25.4万人増(5月+21.8万人)に対し、家計調査ベースでも+43.0万人増(5月-40.8万人)となっている。ただ、今年に入り下方修正が通常化しており、1か月遅れで発表される改定値は1~8月のうち5回で21万人の下方修正、2か月遅れで発表される確報値は1~7月のうち5回で31.8万人の下方修正されており、今9月の「本塁打」級の米雇用統計も下方修正される可能性が濃厚ではないだろうか。今回の雇用統計が11月の大統領選挙までの最後の統計になるからである。
参考までに初めてご紹介するが、雇用統計のなかで景気の実態を端的に表してきた一つの統計が「トラックの輸送従業員数」である。「物流は景気の実態を表す」ためで、9月「トラックの輸送従業員数」は前月比横ばいの154.3万人だが、「前年比ベース」は-0.5%で、23年6月以降、既に1年3か月もの間マイナス圏に陥っている。その前は19年12月~21年3月にマイナス圏に陥り、「コロナショック」をいち早く察知していた。さらに、「リーマンショック」の時期は、07年7月~2010年7月まで約3年間マイナス圏に陥り、また「ITバブル崩壊」の時期も2000年10月~2003年11月まで約3年間マイナス圏に陥っている。11月の大統領選挙までは「バイデン・ハリス指標」のラストスパートでお化粧された統計発表で攪乱させられて、今回の雇用統計でも「ソフトランディングだ」や「ノーランディングだ」と本気で信じている人が増えたのかもしれないが、注目されといないデータにこそ、冷静に景気の実態を表す指標が多いだろう。それは改ざんされている可能性が低くなるためである。