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過去最高を更新した米マネー・マーケット・ファンド(MMF)は何を示唆する?
過去最高を更新した米マネー・マーケット・ファンド(MMF)は何を示唆する?
23/3/31ブルームバーグニュースでは『マネー・マーケット・ファンド資産が最高更新.金利の魅力と銀行不安』が報道されている。『米マネー・マーケット・ファンド(MMF)の資産残高が過去最高を更新した。銀行業界を巡る懸念が世界の市場を揺るがす中で魅力的な金利が投資家を引きつけている。
MMFへの最近の資産増加は、預金者が米国の銀行から資金を引き揚げていることが主因。当初は魅力的な金利が理由だったが、一部の中小金融機関の安定性に対する懸念が今月に入りその流れを加速させた。
米投資信託協会(ICI)のデータによると、3月29日までの週には約660億ドル(約8兆8000億円)が米MMFに流入。資産残高は5兆2000億ドルに達した。前週は約1174億1000万ドルが流入した。銀行システムの状態に対する懸念が世界的にリスク回避を促し、高品質で流動性の高い資産への需要を加速させた。29日までの3週間で約3040億ドルがMMFに流れた。』また、4月1日の日経新聞夕刊では『米中小銀、預金の流出一服』において、『大手銀行や米国外の銀行を含めた全体でみると、16日.22日の週の預金残高は前の週比で0.7%減少した。減少は9週連続となる。銀行全体から預金が減っているのは、より利回りの高い金融商品に資金がシフトしているためだ。その代表格がMMF(マネー・マーケット・ファンド)だ。
MMFは政府短期証券など運用する投資信託の一種で、金利上昇が利回りに反映されやすい。FRBによる急ピッチの利上げで、MMFの利回りは2月に4%台後半に乗せた。ゼロ%台の預金金利との金利差拡大で魅力が高まったところへ預金不安が重なり、資金流入が続く。』と指摘している。
2022/01/24『過去最高水準に積み上がったMMF残高が示唆することは?』のT-Modelコラムにおいて、『今回、何故、このMMFの統計をご紹介したかというと、一部の投資家にこの過去最高水準のMMFが存在するため、仮に株価暴落が起きたとしても、再び上昇してくると楽観的見通しの根拠としているためである。
MMF残高とNYダウを比較すると、確かに、リーマンショック前までは株価水準に連動するかたちでMMFは積み上がり、ITバブル崩壊やリーマンショックの後の株価上昇の下支えとなってきたかもしれないが、今回は株価水準にMMF残高が付いていっていないことが理解できる。つまり、MMFが待機資金として株価を下支えするには、株価がかなり下がらないと動かない可能性もあり、警戒しておかなくてはならない。このMMF残高と株価を見ても、今回の米国バブルがいかに異常であるかが理解できるのではないだろうか。』と指摘した。
冒頭の記事では、米銀預金への不安からMMFにマネーが流れ、MMF残高が過去最高を更新していると報じているが、1975年以降、ほとんど米銀行預金が流出することが無かったことからこのようなマネーの流れは初めてのことになる。米国MMF残高は四半期ベースで発表され、直近は22年第4Qで5.22兆ドル。株価と米国MMF残高の関係を調べると、2000年以降、米国MMF残高がピークを打つと株価がボトムを打つ関係になっている。
ITバブル崩壊の時期は、MMF残高が2001年12月2.28兆ドルでピークを打つが、逆に、NYダウは2002年9月7591ドルでボトム、リーマンショック時はMMF残高が2008年10月3.83兆ドルでピークに対し、逆に、NYダウは2009年2月7062ドルでボトム、さらにコロナショック時はMMF残高が2020年4月4.63兆ドルでピークに対し、逆に、NYダウは2020年3月21917ドルでボトム、といった具合である。つまり、現在のように銀行預金への不安からMMFにマネーが流れて過去最高を更新中ということは、MMF残高がピークを付けるまでは株価は下落局面が続け、そして、その後は過去、MMF残高が減少する過程では株価が何年かかけてMMF残高のピーク水準程度まで株価が上昇することを示唆する。
そのような過去の関係からすると、現在のMMF残高の水準に比べると株価は高過ぎることになり、さらに現在の株価の動きは不自然ということになるが、今後、この不自然な動きは修正されるのかが注目される。