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『金融不安、長期化の恐れ~世界に残る危機の芽』


『金融不安、長期化の恐れ~世界に残る危機の芽』

2023年4月6日日経新聞に『金融不安、長期化の恐れ~世界に残る危機の芽』が報道されている。

『新型コロナウイルス禍で膨らんだマネーが急収縮し、金融市場に波乱を招いている。米資金供給量は1960年以降初の前年同月比でマイナスが続く。急激な利上げとマネー縮小は米地銀の破綻や欧州銀の経営危機につながるなど、金融システムのひずみを浮き彫りにした。官民の緊急対応で小康状態になったが、欧米の不動産市場に危機の芽は残る。金融不安は今なおくすぶり続ける。

クレディ・スイス・グループとUBSは5日までにスイスで株主総会を聞き、株主に経営統合を報告した。米シリコンバレーバンク(SVB)破綻とスイス大手の電撃的な救済合併で始まった米欧の金融システム不安は一旦、峠を越えつつある。(途中略)

もっともウォール街のトップは警戒を解いてない。「現在の危機はまだ終わっておらず、その影響は今後何年にもわたって続く」。JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は株主への手紙でこう指摘した。08年のリーマン危機とは異なると強調しつつも、銀行が保守的になり、実体経済にじわじわと影響するとみている。

危機の底流はマネー供給量の急激な縮小がある。マネーの総量を示す「マネーストック(通貨供給量)」の指標の一つ、「M2(現金、銀行預金など)」(季節調整済み)に注目が集まる。(途中略)M2減少の主因は銀行預金の流出だ。FRBによると米商業銀行の預金は直近週に1257億ドル(約16兆円)減った。減少は9週連続だ。預金者が利回りの高い金融商品に資金を移したほか、中堅銀行の信用不安が銀行預金の流出に拍車をかけた。銀行は預金の流出が続く中、貸出に慎重にならざるを得ない。』

ようやく、日経新聞でもM2の減少を特集で取り上げたかたちだが、T-Modelでは、このM2の減少を重大な問題として、今から4か月前に、2023/01/10『米国マネーサプライが1950年以降で初のマイナス』のT-Modelコラムで取り上げた。

『市中に出回るお金の量を表した米国のマネーサプライ(通貨供給量)の指標であるM2が22年11月前年比-0.4%と、1950年代の集計開始以降で初めて減少した。このM2の急減は冒頭の記事にあるように、『インフレを抑制し、ディスインフレに良い兆候』となる可能性が高い。実際、70年代のインフレ時代はM2が71年8月+13.4%に対し、米CPIは74年12月+12.3%、77年7月同+14.8%に対し、80年4月+14.7%とM2とインフレは2~2年半のタイムラグがある。だが、今回はM2が21年2月+27.1%に対し、米CPIは22年6月+9.1%と、4か月のタイムラグと短い。M2は22年11月に初めてマイナスに陥っているが、いつごろから、どのように米CPIに反映されるかが注目される。

また、2020年のコロナショックによるM2の急増は株価や住宅など資産価格を押し上げる要因ともなっており、今回のM2の初のマイナスはインフレを抑制するだけではなく、資産価格を下落させる要因であることも意味している。』と指摘。

また、2023/03/20『世界のマネーが歴史的な減少は何を意味するのか?』のT-Modelコラムでは、

『3月10日の米地銀シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻を起点とする世界的な金融システム不安は金融大手クレディ・スイス(CS)の経営不安再燃と欧州に飛び火し、米国では連邦当局が預金の全額保護、CSに対してもスイス中銀から最大540億ドルの大規模融資策、を発表。本日20日早朝にはスイスの投資銀行大手UBSがレディ・スイスを約4,200億円(約32億3,000万ドル)の買収額で合意したと発表した。3月17日時点でクレディ・スイスの市場価値は約1兆円(約80億ドル)だが、実質救済合併でこれを大きく下回る。また、米連邦準備制度理事会(FRB)や日銀など日米欧の6中央銀行は3月19日、米ドルの資金供給を毎日実施する拡充策で協調することを決定、3月20日から少なくとも4月末まで資金繰り難に陥った銀行の経営不安に対応する予定と伝えられた。

これで世界的な金融不安は一旦、和らぎそうだが、前述のように現金(キャッシュ)を市場に投入しても想定よりも米国M2(マネーサプライ)が増えにくい1929年の大恐慌以来となる前年比マイナスの極めて稀な金融危機を迎えており、約100年振りの金融危機を乗り切るノウハウが今の中央銀行にあるのかが注目される。同じヨーロッパでは今回の金融大手クレディ・スイス(CS)の実質破綻の陰であまり報道されていないが、ドイツ銀行が気になるところ。株価は3月から下落し続けて、3月18日株価9.89ドルと10ドルを割り込んでいる。もしドイツ銀行に何かがあると、多額のデリバティブを保有していることから今回のCSのような救済合併とはなりにくいだろう。ドイツ銀行の株価チェックが必要な時期に入ったということかもしれない。』と指摘。

また同コラムでは、『マネーの量を示す通貨供給量(M2)は、単純化すると「現金×信用乗数」で出来ている。今回M2の前年比が1929年の大恐慌以来のマイナスとなった最大の要因はこの「信用乗数」が低下しているからである。米国の現金は23年1月2.2兆ドルと過去最高に増えているにも関わらず、M2は22年3月21.7兆ドルをピークに減少傾向を辿っている。つまり、現金を供給しても今までのようにM2の増え方をしていない実態を示しており、それが「信用乗数」の低下として表れている。この「信用乗数」の前年比を振り返ると「〇〇ショック」のときに大きく低下する傾向が強く、直近22年12月-0.5%と、ITバブル崩壊の2000年1月-0.6%水準まで低下している。逆に、バブルとなっているときは「信用乗数」の前年比が急上昇しており、「コロナバブル」の20年5月0.88%、「リーマンショック」前の08年4月0.5%を記録していた。 』とも指摘した。

冒頭の記事では、「M2減少の主因は銀行預金の流出」と指摘しているが、本当の理由は「「信用乗数」が低下しているからである」。このマネーの根本的な考え方を理解することが、現在の状況が重大な危機を迎えていると気づく近道なのだが、どれだけの人がそれに気づいているのだろうか。それこそが深刻な危機なのである。

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