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雇用堅調で米金利上昇は本当か?


雇用堅調で米金利上昇は本当か?

2023年7月8日日経新聞に『米金利上昇で日米株安~雇用堅調、利上げ「年内2回」に傾く 日経平均は一時400円下落』が報道されている。

『7日の東京株式市場で日経平均株価は続落し、前日比の下げ幅は一時400円を超えた。6日の米市場では米国の金融引き締め度合いを測る「実質金利」が急上昇し、株式からの資金流出につながった。市場では米連邦準備理事会(FRB)による「年内あと2回」の利上げの織り込みが進む。金利の上昇局面で株高の持続力が試されている。

6日の米債券市場で長期金利の指標となる10年物国債利回りは4.0%台と前日比0.1%も上昇(債券価格は下落)した。金融政策動向に敏感な2年物国債は一時5.1%台と2007年6月以来、ほぼ16年振りの高水準を付けた。7日にも金利上昇の流れは続き、米長期金利は4.1%に迫る場面もみられた。

金利上昇のきっかけとなったのは米雇用指標の底堅さだ。6日発表された米民間調査会社ADPの6月の全米雇用リポートでは就業者が市場予想の倍以上の伸びを示した。7日発表の6月の米雇用統計でも平均時給が市場予想を上回った。』

冒頭の記事では、米長期金利の上昇要因は米雇用指標の底堅さと指摘しているが、本当にそうだろうか?米長期金利の上昇はインフレ要因か、それ以外の要因に分解できるが、昨年6月まではインフレ要因で金利は上昇したものの、それ以降は別の要因で動いているとT-Modelでは以前から指摘してきた。従って、今回の金利上昇要因も米雇用指標の底堅さという「インフレ要因」ではなく、別の要因の可能性が高いと考えている。

T-Modelでは、米長期金利が昨年10月17日週4.22%まで急上昇した要因は、世界的な金融危機で世界の外貨準備が減少、特に、日本の外貨準備が急減し、8割を占める米国債が売却されたことが要因と考えている。今回の長期金利上昇も外貨準備の減少が原因だが、それは日本ではなく、中国の外貨準備の減少の可能性が高い。理由は、人民元が15年振りの安値に迫り、外貨準備を取り崩して為替介入しているためである。中国の外貨準備高の3割弱が米国債で、中国が為替介入をすると米長期金利を押し上げることになるからである。

2023年7月6日日経新聞に『人民元、15年ぶり安値迫る~米中金利差、一段と拡大』が報道されている。

『中国の通貨、人民元が2007年末以来、約15年半ぶり安値に迫っている。米国の継続的な利上げで、米中金利逆転が新常態(ニューノーマル)となったことが主因だ。景気刺激を図る中国の一段の金融緩和は通貨安を誘発しかねない。人民元安が金融政策の足かせとなっている。

「為替相場が大幅に変動する危険を断固として防ぐ」。6月28日、中国人民銀行(中央銀行)は北京市内で開いた4~6月期の金融政策委員会でこうした議論を交わした。人民元は下降圧力にさらされている。6月30日の上海外国為替市場では、人民元が対ドルで、7.273元まで下落した。22年11月10日以来の安値水準だ。仮に同年11月1日に付けた7.328元を下回れば、07年12月以来、約15年半ぶりの水準となる。5日の取引の終値は7.244元だった。(途中略)

中国政府は人民元安を強く警戒する。人民元切り下げが「人民元ショック」につながり、為替相場のコントロールを失いかけた15年の記憶が生々しいためだ。(途中略)中国経済は回復ペースの鈍化が鮮明だ。中国の6月の製造業購買担当者指数(PMI)は3か月連続で好不調の境目である50を割り込んだ。(途中略)ただ、景気支援を目的とした0.25~0.5%といった政策金利の思い切った引き下げは、米中金利差の一段の拡大を通じて通貨安を加速させかねない。人民銀は大幅利下げに消極的な姿勢を崩さない。』

10年債と動きが似ている5年債の利回りは4.36%と昨年10月ピーク4.2%を既に上回っていることから10年債利回りも昨年10月超えるのは時間の問題だろう。米長期金利がピークを付けた昨年10月は、NYダウは史上最高値から-37%下落して株価のボトムの時期と一致しており、米長期金利が昨年10月ピークを超えると株式市場にどのような影響がでるのか。本来の長期金利と株式市場の関係を株式市場はいつまで無視し続けられるのかが最大の注目点である。

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