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「世紀の空売り」対「ハイテク株の女王」


「世紀の空売り」対「ハイテク株の女王」

2021年8月18日日経新聞に『「世紀の空売り」再び?~米著名投資家、アークETFに照準』が報道されている。

『日本でも人気の米運用会社、アーク・インベストメント・マネジメントが難敵に直面している。2007~09年の金融危機時に大きな利益を上げた著名投資家のマイケル・バーリ氏が、アークの運用する上場投資信託(ETF)のオプション取引でプット(売る権利)を購入したことが16日に明らかになった。ハイテク株投資を続けるアークに、「世紀の空売り」を仕掛けようとしている。

バーリ氏は、ベストセラーとなった米作家マイケル・ルイス著のノンフィクション「世紀の空売り(The Big Short)」で取り上げられて、一躍有名になった。住宅ローンの証券化商品の裏付けとなる物件を読み込んだうえで、支払い不能が続出して米住宅バブルが崩壊すると予測。信用リスクを取引するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)で大もうけしたという。そのバーリ氏が運用するサイオン・アセット・マネジメントが16日に米証券取引委員会(SEC)に提出した四半期の保有有価証券報告書によると、4~6月期にアークの運用する旗艦ファンド「アーク・イノベーションETF」について、プットオプションを23万5500口取得した。金額にして約3080万ドル(34億円程度)。プットオプションは権利を購入すると、値下がりした場合に利益を得られやすい仕組みだ。仕掛けているのはアークのETFだけではない。報告書では、6月末時点で米テスラのプットオプションも107万5500株(金額で7億3101万ドル)分保有していることが明らかになっている。3月末時点から27万株分程度のプットオプションを積み増した。

アークにとってテスラは最大の投資先だ。アーク・イノベーションETFでは16日時点でテスラを331万株あまり保有し、運用資産の10%強を占める。金額では23億ドルを超え、次に保有割合の大きい遠隔医療の米テラドック・ヘルス株のほぼ倍だ。テスラの現在の株価は今年1月の高値を2割強下回っている。QUICK・ファクトセットのデータによると、バーリ氏がプットオプションを取得した4月以降で、アーク・イノベーションETFから累計で3085万ドルの資金が流出している。バーリ氏だけでなく、他の投資家からの人気にも陰りがみえ始めている。
アークは中国当局による規制強化への対応で保有する中国株の処分を急ぎ、7月以降でみてもアーク・イノベーションETFの価格は約1割下がるなど運用成績はさえない。アークのETFのプットを取得したバーリ氏の真意は分からないが、世紀の空売りで成功した投資家の動向は今後も注目を浴びそうだ。』

市場では、ハイテク株下落の予兆として「世紀の空売り」対「ハイテク株の女王」の構図で注目を集めている。バーリ氏は過去数ヶ月、市場の持続不可能なバリュエーションについて、個人投資家は空前の暴落に巻き込まれる恐れがあるとの警告を発してきた。一方、ハイテク株の女王と知られるアーク・インベストメント・マネジメントのキャシー・ウッド氏は「破壊的イノベーション」をテーマにテスラ株などの集中投資で高い運用益を挙げ、「アーク・イノベーションETF(ARKK)」は20年に2.5倍に上昇した。ただ、21年は7%安と冴えない。ウッド氏は17日、「イノベーション分野で爆発的な成長と投資機会を生み出しているファンダメンタルを理解しているとは思えない」ツイッターに投稿。19日の米CNBCの番組では株式市場が「弱気派が指摘するバブルだとは思わない」と延べ、相場の弱気派はインフレと金利上昇を強調し過ぎで、技術革新による生産性向上に伴って逆にデフレ到来を予想すると反論する。

今回は著名投資家同士の戦いで注目を集めているが、マーケットでもこのような意見の対立は良くある。「ハイテク株の女王」の考え方は「小型成長株」で運用する投資家にも多く、特にバブル期に見られる。「イノベーション分野で爆発的な成長と投資機会を生み出しているファンダメンタルを理解しているとは思えない」の投稿に表れているが、「技術革新」があれば延々成長し続けると思い込んでいるためで、1999年~2000年のITバブルの時にも同様に考え「バブルではない」と主張する投資家が多かったと記憶している。結果的にはバブル崩壊によってそれが間違いであったことを証明したのだが・・。

このような投資家がどうして現れるのかを分析すると、バリュエーションと関係が深い。『「技術革新」があれば延々成長し続ける』と考える投資家が増えるのは、バリュエーションが上昇して歴史的高水準をつける過程に表れ、そのバリュエーションがピークアウトするときにその『幻想』から目が覚めるような『バブル崩壊』が起きてこのような投資家が消えていく。現在も2000年のITバブル時に匹敵する歴史的水準までバリュエーションは上昇しており、数年後、「世紀の空売り」対「ハイテク株の女王」の戦いを振り返ったときには著名投資家のマイケル・バーリ氏が正しかったと証明されるだろう。ただ、短期的にはどちらが正しいかを決めるのは時期尚早ではないだろうか。「世紀の空売り(The Big Short)」の映画でも描かれたように数ヶ月の違いで勝者にも、敗者にもなり得るのが、「バブル期」の勝負だからである。マイケル・バーリ氏はその時の教訓は忘れていないと思うが、この勝負に勝てば第二の「世紀の空売り(The Big Short)」の映画が作られているのではないだろうか。
その時はGAFAMやテスラがどうなっているかが最大の注目点だろう。

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