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「株価は名目GDPに連動する」セオリー

「株価は名目GDPに連動する」セオリー

2024年2月15日日経新聞に『名目GDP、昨年5.7%増~32年ぶり伸び 物価高が押し上げ』が報道されている。

『内閣府が15日発表した2023年の国内総生産(GDP)速報は、前年比で実質1.9%増、名目5.7%増となった。物価上昇が広がりをみせ、名目成長率はバブルの影響が残る1991年のプラス6.5%以来の高さにある。日本経済はデフレからの完全脱却に向けた動きが進んでいる。

名目成長率は物価変動も含めたGDPの増加率で、企業の実際の売上高や利益、人々が受け取る賃金の額や株価などと連動する。名目の実額は591兆円だった。名目成長率を実質成長率と物価の伸びに分けて分析すると、実質成長率はプラス1.9%だった。新型コロナウイルス禍からの経済活動の回復で、個人消費が0.7%伸びたほか、設備投資も1.3%増、輸出も3.0%増えた。

もう一つの要因である物価は、2023年の名目成長率を大きく押し上げた。GDPでみたインフレ率であるGDPデフレーターは前年比3.7%上昇となり、現行基準のGDP統計で遡れる1981年以降、暦年ベースで最も高い伸び率を記録した。資源高や円安の影響を販売価格に転嫁する動きが進んだ。労務費など幅広いコスト上昇を価格に反映するなど、国内要因によるインフレが根付き始めた。(途中略)

賃金上昇はなお課題だ。23年の雇用者報酬は前年に比べ、名目1.8%増だったが、インフレ率を調整した実質では1.8%減となった。名目賃金の上昇が進んでいるものの、物価上昇を上回る賃金増は実現していない。厳しい所得環境が続けば、個人消費が低迷し、再びデフレに戻るリスクもある。』

この記事では冒頭に、『日本経済はデフレからの完全脱却に向けた動きが進んでいる。』と指摘する。本当きデフレからの完全脱却の動きなのだろうか。

『名目GDP成長率-実質GDP成長率』から簡易にインフレ率を算出すると、23年+3.8%に対し、バブル期のピークである89年+10.4%。バブル期は実質GDP成長率が88年+6.8%の高成長期に表れたインフレ率に対し、23年は実質GDP成長率+1.9%の低成長下で起きている点が大きく異なる。

では、低成長下で何故、インフレ率が90年以来の高い伸び率となったのか。それはバブル期と同水準まで進んだ円安に支えられている。四半期ベースで『名目GDP成長率-実質GDP成長率』とドル円を比較すると明らかで、第1期がアベノミクス直後のバズーカ緩和で2011年ボトムから45円幅の円安局面で2015年+3.3%のインフレ率、今回は第2期で2020年から46円幅の円安局面で2023年+5.3%のインフレに押し上げている。つまり、バブル期は内需活況による名目GDP成長に対し、今回は円安による輸入インフレで名目GDP成長率が1991年以来の高い伸び率と押し上がっただけなのである。

「株価は名目GDPに連動する」セオリー通り、名目GDP成長率を反映してバブル期の史上最高値までの株価上昇を説明することは可能だが、問題は現在のインフレは円安による輸入インフレの影響が大きく、円安が持続可能かということである。何故なら、現在の購買力平価は108円台と現在のドル円とは大きく乖離しているためである。2月15日発表された日本の10-12月期国内総生産(GDP)速報値が市場予想に反して2四半期連続のマイナス成長でテクニカルリセッションに陥り、特に、個人消費は3四半期連続マイナスと内需低迷が際立つなかでの名目GDP成長率の高成長を不思議に思わないだろうか。2024年は1月1日の「能登半島地震」の影響で消費マインドが低下しているなか、24年1~3月期の個人消費が4四半期連続マイナスに陥るかが懸念される。『日本経済はデフレからの完全脱却に向けた動きが進んでいる。』のではなく、単に、不自然に進んだ円安が支える名目GDPの成長では、いずれ実質GDP成長率がマイナス圏に陥ることは時間の問題なのではないだろうか。

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