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中間選挙での敗北を示唆し始めた「悲惨指数(Misery Index)」


中間選挙での敗北を示唆し始めた「悲惨指数(Misery Index)」

2022年1月29日日経夕刊に『ナスダックに「弱気」の足音』が掲載されている。

『28日の米株式市場では四半期決算が好感されたアップルが大幅上昇し、相場全体をけん引した。半面、金融引き締め懸念を背景に「弱気相場」の足音が迫る。今年に入り下げが目立つナスダック総合株価指数は小幅ながら5週ぶりに週間で上昇した。ただ2021年11月の過去最高値からは14%(28日時点)安と、2割超の下落で定義される弱気相場入りが迫る。一部のサブインデックスはすでに弱気相場入りしている。小型株で構成するラッセル2000株価指数は27日、20年3月以来となる弱気相場入りとなった。フィラデルフィア半導体株指数は28日、昨年12月に付けた高値からの下落率が一時、2割を超えた。米中の主要ハイテク10銘柄で構成する「NYSE FANGプラス指数」も2割超安だ。

米連邦準備理事会(FRB)のタカ派姿勢の強化が背景にある。今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)では3月の利上げ開始を示唆。パウエル議長はインフレが続く足元の経済環境は過去とは大きく異なると何度も強調した。利上げと保有資産の縮小(QT)の同時進行で市場が混乱する「タイトニング・タントラム」への懸念が強まる。バンク・オブ・アメリカは28日、今年の利上げ回数予想を7回に修正した。3月以降の毎回の会合で0.25%の利上げを想定する。米国野村証券は3月の利上げは通常の2倍にあたる0.50%になると予想。0.50%の利上げとなれば、00年5月以来だ。22年前の大幅利上げはIT(情報技術)バブルの崩壊につながった。

民間投資家のリスク許容力を高め、株高を誘発してきた量的緩和(QE)も年央には縮小が始まりそうだ。過去2年間の株高を誘発したFRBのパワフルさを理解する投資家ほど、その幕引きの影響の大きさを警戒する。3月のFOMCに向け、株式相場は28日のような短期の反発を巻き込みながらも、下値を探る展開となりそうだ。』
ナスダックが他の指数よりもより下落しているのは相対的に上昇しすぎたからである。2022/01/24『米国株は「スーパーバブル」、暴落が進行中』のT-Modelコラムにおいて、

『T-Modelでは、米国株式のバブルを計る一つの指標として『NASDAQ指数/NYダウ』倍率を提示してきた。冒頭の記事にあるように「金融引き締め懸念の直撃を受けているのが高いバリュエーション(投資尺度)が目立つハイテク株だ。ナスダック総合株価指数は年初来で5%安。」と指摘するように、NYダウに比べてナスダック総合株価指数の下落が大きくなることで、同指標は直近22年1月10日週0.41倍と、21年11月15日週0.45倍からはピークアウトの兆しが表われている。

歴史的には、ITバブルの2000年3月0.51倍以来の高水準で、現在がバブルに近い状況であることを示唆しているが、当時は同指標が下落する過程でNASDAQ指数も2000年3月ピーク5048→02年9月ボトム1139まで-77%の大暴落となったことは記憶に新しい。同指標の水準からみると、2000年のような大暴落に発展する可能性は十分にあり、そのシグナルの一つは2021年5月10日週0.39倍を下回ることだろう。』と指摘。先週1月17日週の同指標は0.4倍までさらに低下し、0.39倍に接近している。』と指摘した。

冒頭の記事では『今回は「タイトニング(引き締め)・タントラム」となる可能性が高い』と指摘しているのは、21年12月の米国の消費者物価指数(CPI)上昇率が39年半振りの高水準となるなか、「物価の番人」のFRBとしてはインフレ対応が最重要課題だからである。特に、米国の経済学者アーサー・オークン氏が考案した国民の生活度合を表す指標として失業率と消費者物価指数の上昇率を加算して算出される「悲惨指数(ミザリー・インデックス、Misery Index)」があるが、悲惨指数が10%を超えると生活が圧迫されることで国民の不満が高まり、20%を超えると時の政権に影響を与えると言われている。ただ、90年以降は、同指数が10%を超えると1期4年で大統領が替わる傾向が強く、失業率3.9%と消費者物価指数7.1%で11.0%の現在の水準では現政権に不利な状況であることを示している。秋に中間選挙を控え、インフレの政治問題化を避けるためにも早期の対応に迫られていると言える。

では、何故、米国では39年半振りの物価上昇率となっているのだろうか。世間では、『パンデミックによる供給側の混乱などにより、需給ギャップが特に大きくなっているから』というのが一般的な理由である。そうなのかな?と頷けるものの、これを理由にしてしまうと、では「供給側の混乱」はいつ、どのようなかたちで落ち着くのかが予測できない。いつも言うことだが、将来を予測できないことを理由すると、思考停止というか、そこで行き詰まることになる。

T-Modelの分析では、やはり「緩和マネーの増大」が米国での約40年振りの物価上昇の原因となる。リーマンショック以降の日米欧の中銀の資産残高を見ると、パンデミックが始まる2020年2月14.7兆ドルだったのが、21年12月24.8兆ドルと約10兆ドル拡大、つまり、その約10兆ドルのマネーが現在の米国の物価上昇の根本的な原因なのである。

従って、この物価上昇を早期に止めたければ、日米欧が協調して資産圧縮を早めることが必要になってくる。FRBの金融引き締めのスケジュールに関して、市場では、3月に量的緩和縮小(テーパリング)終了、3月から毎月0.25%の金利引き上げ開始、6月から資産圧縮開始、と予想しているが、T-Modelの「緩和マネーの増大」が物価上昇の原因が正しいならば、金利上昇よりも優先すべきは資産圧縮ということになる。コロナショック時にFRBは「緊急利下げ」の間違った政策によって株価暴落の足を引っ張ったが、今回も間違った金融政策を行うことになるのか。そして、その金融政策の間違いが、11月米国中間選挙で与党民主党の足を引っ張ることになるのかが注目される。

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