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大恐慌以来、90年振りの歴史的株安は何を示唆?


大恐慌以来、90年振りの歴史的株安は何を示唆?

2022年5月21日日経夕刊に『歴史的株安、新たな局面へ』が掲載されている。

『米株式相場は歴史的な下落局面にある。今週のダウ工業株30種平均は週間で3%安となり、8週連続で下落した。QUICK・ファクトセットによると、1896年から算出が始まったダウ平均の最長続落記録は8週連続で、今回を含めて過去2回だけしかない。来週も下げ止まらなければ9週連続となり過去最も長い株安となる。下げスピードも過去最速級だ。S&P500種株価指数は年初から96営業日目に当たる5月19日までに18%も下落。コンパウンド・キャピタル・アドバイザーズのチャーリー・ビレロ氏によると、年初からの96営業日の下落率としては1932年(33%)、40年(20%)に次ぐ大きさだ。

理由は2つある。1つ目は需給要因だ。米金融取引業規制機構(FINRA)によると、マージンデット(証拠金債務)と呼ばれる信用取引の買い残高は4月末時点で7729億ドル(約98兆円)。3月末からの減少率は3%だ。4月のナスダック総合株価指数は月間で13%安だったのに比べると減り方は小さい。信用買いの個人は4月の株安局面では慌てずに踏ん張っていたもようだ。ただ5月以降の株安でマージンコール(追い証)の観測が浮上。信用取引では含み損が発生すると担保に当たる保証金から損失分が差し引かれる。保証金が最低維持率を下回ると追加の担保差し入れか持ち高解消を迫られる。(途中略)

2つ目は景気後退懸念だ。米長期金利が5月9日に3.20%と2018年11月以来の水準に上昇した後、19日に2.77%まで低下。4月末(2.93%)の水準を下回って5月を終えれば月間では6カ月ぶりの低下となる。金利上昇のピークアウト観測が強まりそう。早くから景気後退の可能性を指摘した独アリアンツのモハメド・エラリアン氏はSNS(交流サイト)などで長期金利の低下に対し「株売りは新たなフェーズ(局面)を迎えている」と指摘。これまでは金利上昇懸念が株安の主因だったが、今後は景気不安が取って代わるとの意味合いだ。

企業業績の低迷、クレジットスプレッド(国債など基準金利に対する上乗せ幅)の上昇による信用不安が本格化するのはここから。ドイツ銀行のビンキー・チャダ氏は景気後退が始まれば、S&P500種は3000まで下落すると予想する。新型コロナ禍前の水準までほぼ戻ることになる。』

NYダウは週ベースで、世界恐慌の1932年以来、90年振りに8週続けて下落している。8週間の下げ幅合計は約3600ドル(約1割)に達した。下落の背景にあるのは株価の割高感で、PBRも2000年のITバブル以来の高水準にある。新型コロナウィルス下のFRBによる大規模な金融緩和によって押し上げられた株価がその支えを失って下げ止まりにくくなっているのは当然だろう。

08年のリーマンショック以降、株式市場が大きく動揺する局面では金融緩和などでFRBが下支えに動いてきたので、市場関係者の間には困ったときの『FRBの緩和頼み』が定着している。だが、消費者物価が40年振りの水準に達したことでFRBが優先するのはインフレの抑制となり、積極緩和から引き締めへとかじを切った。まだ、市場関係者にはFRBに期待しているかもしれないが、そんな甘えは許さない方向で動いているということだろう。万年強気でも通用していた時代が終わり、NYダウの「90年振りの8週連続下落」は『40年サイクル』を甘く見るな!と市場が警告しているかのようである。

パウエル議長は5月の記者会見で「ボルカー氏を大変尊敬している。彼は正しいと思ったことを実行する勇気があった」と答えた。1979年に就任した元FRB議長の故ポール・ボルカー氏は景気減速もいとわない積極的な引き締めでインフレに立ち向かい「インフレファイター」と呼ばれた。パウエル議長はご自分を「インフレファイター」になぞろうとしているようだが、そもそも消費者物価を40年振りの水準まで放置したのは誰だろう?FRBは2021年の消費者物価の上昇を「一過性」と判断して、金融緩和策を放置し続けてきたことが原因なのである。2年債利回りと政策金利との差が1984年6月、94年12月以来となる2%以上に拡がったことは政策金利の引き上げが遅れた政策ミスを突きつけていると言えるだろう。つまり、世間で言われているFRBの政策金利の大幅な引き上げは「タカ派」姿勢だからではなく、政策ミスを慌てて修正しようとしているだけのようにも見え、そんなパウエル議長に「インフレファイター」のような「正しいと思ったことを実行する勇気」があるかは甚だ疑問である。何れにしろ、パウエル議長の「勇気」が試される2022年となることは間違いないだろう。

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