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米財政赤字は過去最大のGDP比15%へ

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米財政赤字は過去最大のGDP比15%へ

2020/4/19日経新聞に『コロナ、ドルの信認試す~米財政赤字、GDP比15% 問われる出口戦略』が報道されている。

『新型コロナウイルスが米ドルの需要を強めている。ドル建て債務の多い新興国などが確保に躍起だ。ただ、コロナ対策で米国の財政赤字が大きくなり、将来のドル安リスクも蓄積している。経済の底割れを防ぎながら感染を早期に収束させ、その後の経済を急回復につなげられるか。ドルの行方は出口戦略が握る。

「何でもやるべきだが、領収書は保管するように」。国際通貨基金(IMF)の15日の会見で、ガスパール財政局長はこう述べた。感染のショックを和らげるには財政面で「迅速かつ断固とした行動が重要」だが、正確な会計や効果の検証を怠るなという意味を「領収書」に込めた。世界各国のコロナ対策費の合計は、世界の国内総生産(GDP)の9%強にあたる8兆ドル(約860兆円)にのぼる。そのうち2兆ドル強を占める米国は、財政赤字や債務残高の増加がリーマン・ショック時をも上回る。IMFの見通しでは20年の米財政赤字はGDP比15.4%と、日本の7.1%やユーロ圏の7.5%を大きく上回る。債務残高のGDP比131%は第2次世界大戦直後の1946年(119%)を超え、2030年代と予想されていた水準に早くも到達する。

米政府が安心して国債を増発できる裏には、米連邦準備理事会(FRB)がいる。量的緩和の再開を決めた3月15日以降、すでに1.3兆ドルの米国債を買った。金利が抑えられており、足元の10年債利回り0.6%台で経済対策費の2兆ドルを調達したと仮定しても、利払い費は年120億ドルと19年度(3750億ドル)の3%強にしかならない。米国の状況は、中銀が国債を引き受ける「マネタイゼーション」に似る。第1次大戦時のドイツや80年代のアルゼンチンでは、財政が膨張し通貨の信認が失われた。「禁じ手」とされる領域だ。

直近の経済データをもとに為替相場の理論値「日経均衡為替レート」を計算すると、円を除く主要通貨に対するドルの足元のレートは理論値に比べ割高だ。ドル安圧力がかかりやすい状態といえる。この理論値に各国のコロナ対策による財政悪化を加味すると、米国の赤字が大きいためにドルの理論値はぐっと下がる。円相場の理論値は1ドル=110円程度から93円台の円高になる。足元の円相場は107円台だが、潜在的にはドル安・円高に傾きやすい。ドルの信認は、巨額の財政支出をコロナ危機の収束と、経済のV字回復につなげられるかにかかる。感染への対応に失敗し経済の収縮が長引けば、財政赤字は一段と悪化する。ドル安と米国債売りの悪循環に陥りかねない。』

この記事は2つの重要なサイクルの点から注目すべきなのである。一つは以前からセミナーや著書で指摘してきた『ドル高の15年サイクル』。拙書『いま持っている株は手放しなさい!』の『ドル・インデックスが15年周期でピークをつけるナゾ』(P139)において、

『過去を見てみると、69年、85年、01年、16年と、15~16年サイクルでピークをつけています。そして、十分お金が集まった時点で行うのが、突然の「ルール変更」です。

71年には「ニクソン・ショック」(米ドル紙幣と金の兌換一時停止)、85年には「プラザ合意」(円高ドル安への誘導)、01年には「9.11テロ」(世界的な株価の大幅下落)の時にルール変更しています。これらのルール変更によって、アメリカは貿易赤字と財政赤字を一気に帳消しにしてきました。』と指摘した。

もう一つは、1940年の「幻の東京オリンピック」と第二次世界大戦、2020年の「東京オリンピック」と新型コロナの歴史的符号。2020/03/23『「戦時体制」に入った欧米と呑気な日本』のT-modelコラムにおいて、

『株価というよりどころを失ったトランプ大統領が「戦時の大統領」が過去、支持率を高めた事実を使い始めたかどうかは定かではないが、欧米では「戦時体制」に入っていることは事実である。また、ブラード総裁の「大恐慌時を上回る」悲惨な見通しが正しいかは別にしても、リーマンショック以上の経済危機に落ち込むことは間違いなさそうだ。そのため、今、必要とされているのは戦時中の財政刺激策に似た政策であり、政府が失われた民間需要を穴埋めすべきなのである。このように欧米では、「戦時」「大恐慌」レベルの危機感で財政政策を講じようとしているのに対し、日本の当局者、国民の危機感のなさはどこからくるのだろう。想像力の欠如か、それとも「平和ボケ」でぼーっと生きているからなのだろうか。1940年に第二次世界大戦で東京オリンピックが中止になったが、同様に、新型コロナウイルスの「パンデミック」で2020年の東京オリンピックが中止・延期に追い込まれそうな現状から、「第二次世界大戦」と「新型コロナウイルス」が歴史的に同じ位置づけであるということに気づかないのだろうか。』と指摘した。

現在の世界の状況はこの2つのサイクルの視点から見ると当然の帰結であり、これから我々に襲いかかってくる厳しい近未来をも容易に想像がつくのではないだろうか。今こそ『歴史は繰り返す』を忘れないことである。

 

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