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米長期金利が一時4.37%と16年ぶり高水準


米長期金利が一時4.37%と16年ぶり高水準

2023年9月20日日経夕刊一面に『米長期金利が一時4.37%、16年ぶり高水準~引き締め継続観測』が報じられている。

『19日の米債券市場で長期金利が一時、4.37%まで上昇(債券価格は下落)した。8月下旬に付けた金利水準を上回り、2007年11月以来15年10カ月ぶりの高水準になった。インフレ再燃を警戒する米連邦準備理事会(FRB)が高い政策金利をより長く保つとの見方が広がり、国債売りが優勢になった。長期金利の指標になる10年物国債利回りは前日から0.05%ほど上昇し、4.37%を上昇し、4.37%を上回る場面があった。終値は4.365%程度だった。 FRBは19日から米連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、20日に決定内容を公表する。市場では、今回の追加利上げを見送る一方、必要に応じて年内に利上げする選択肢は残すとの見方が根強い。足元の原油高や米景気の強さがインフレ減速を阻み、反転上昇させるリスクがくすぶっているためだ(途中略)』

2023年9月7日日経夕刊に『米長期金利はいかに上がったか』のコラムが掲載されている。

『市場金利としての長期金利を決定するのは、市場の需給要因である。成長率やインフレといった景気要因を反映した金融政策によって決定される短期金利の影響を受けるのは当然だが、我が国のように、長期金利にまで中央銀行が介入しない限り、市場要因を無視することはできない。今春以降、米国の長期金利(10年物国債利回り)が急上昇した。5月の底の3.29%から4.36%まで、3月高値の4.09%を大きく上回った。2年物利回りも上昇したが、3月高値の5.08%を上回っていない。

この背景にある供給側の事情をみる。議会で債務上限の引き上げが決着したため、国債の新規発行が再開した。とりわけそれまで手元資金の食い潰しできた財務省が手元資金の積み増しを始めたために発行額が大きく増えた。また、金利上昇による利払い費の増加や名目成長率の減速によって税収が落ちてきて、財政赤字が増加基調にあることも見逃せない。

需要側の事情としては、長い間大きな買い手であった外国の中央銀行、とりわけ日本と中国が売り手に変わったことがある。この両国とも、貿易赤字になり資本流出によって国際収支が悪化し、通貨安に見舞われている。国内的には、商業銀行が売り手となってきた。金利の急上昇によって預金がMMFや短期国債に向けて流出し、他方で景気減速のなかでも、まだ貸出が増えているため、資金繰り上、国債を売らざるを得ない。(途中略)』

先週、米長期金利は9月22日高値4.508%まで上昇し、昨年10月高値4.338%を突破して、冒頭の記事にあるように2007年11月以来15年10カ月ぶりの高水準を記録した。2007年11月はリーマンショック直前の時期だが、次の節目は06年6月高値5.14%となる。

米長期金利が上昇している要因について、同コラムでは需給がその要因であると指摘しているが、これはT-Modelと同じ考え方で今回、ご紹介した。さらに、T-Modelでは足元のWTI原油価格が6月末時点70ドル前後から一時、93ドル台後半と約3割上昇、22年11月以来の高値を付けたことが大きいと考えている。WTI原油価格はリーマンショック直前に08年6月145ドルのピークまで上昇しており、更なる上昇で米長期金利を押し上げることになる。

米長期金利が約16年振りの水準まで上昇したが、一足先にその水準に達していたのが政策金利に左右される2年債利回り。ようやく先行していた2年債利回りに長期金利が追いつき始め、07年や19年のようなかたちに近づいたわけだが、これまでと大きく異なるのは米長期金利が1980年~2020年までの40年間の長期下落局面サイクルを終えて、2021年以降の長期上昇局面サイクルに入っていることである。つまり、2年債利回りと10年債利回りの関係は、1970年代のインフレ期のように政策金利を下げる前に長期金利が大きく上昇するかたちで10年債利回り-2年債利回りの「逆イールド」が解消するかたちも想定する必要があるかもしれない。

米国の長期金利が約16年振りの高水準に上昇したことで注意すべきもう一つのポイントは、日本の長期金利が米国の長期金利との連動性が強まっていることである。2002年以降、米長期金利から3%P引いた水準は日本の長期金利を下回って推移していたが、22年以降、それを上回り始めているためだろう。日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用柔軟化したことで日本の長期金利は先週、一時、0.725%と9年8か月ぶりの水準まで上昇したと考える向きもあるが、米金利が上昇する過程で日銀の政策修正をせざるを得なかったと考えるべきではないだろうか。仮に、米長期金利が次の節目である06年6月の5%台に乗せると、当時の日本の長期金利は2%弱に達しているが、そこまで現在の日本は長期金利の上昇を許容でききるのだろうか。日銀の政策修正を気にする前に、米国の長期金利の上昇に市場参加者は注意を払う時間帯に入っているということである。

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