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経済の「ハリケーン」に備えよ!


経済の「ハリケーン」に備えよ!

2022年6月1日日経夕刊に『冷めぬ消費熱に潜むワナ』が掲載されている。

『米東部ニューヨーク州では最高気温が35度近くまで上がり、夏の訪れを感じさせる日々が続く。欧州連合(EU)によるロシア産石油の禁輸合意で進んだ原油高に加え、行楽シーズンにおける需要拡大も反映し、全米自動車協会(AAA)によるとレギュラーガソリン1ガロン(約4リットル)あたりの全米平均価格は5月31日に4.622ドルと過去最高を更新した。1年前より52%も高くなり、車社会の米国の家計に重くのしかかる。だが当局者にとって頭が痛いのは、ガソリンをはじめ物価の高騰が続くなかでも個人消費が力強さを保っていることかもしれない。4月の個人消費支出(PCE)は前月比で0.9%増と事前予想を0.2ポイント上回った。

(途中略)

FRBは利上げや保有資産の圧縮といった政策を通じて経済全体の需要の過熱を抑え、供給サイドと釣り合いを取ることで物価を引き下げようとしている。なかなか「熱」が下がらなければ、より強力な手を打つ必要が出てくる。ウォラー理事は物価上昇率が目標の2%に近づくまでは0.5%の大幅利上げを継続する可能性を示した。

8週連続の下落で計3599ドル安くなったダウ平均が先週に1951ドル高と下げ幅の半分以上を埋め、株価の調整が一巡しつつあることもFRBにとっては痛しかゆしの面がある。金融環境全般を引き締めるうえでは、金利の上昇だけでなく株価の下落で消費が減速する「逆資産効果」も見込んでいるためだ。「株価が上昇すればするほど、FRBはより(引き締めに積極的な)タカ派的になるだろう」。モルガン・スタンレーの米国株ストラテジスト、マイケル・ウィルソン氏はこう指摘する。景気や株価が底堅ければ物価は十分に下がらず、FRBの引き締め加速が最終的により深刻な不況や株安を招きかねない。米経済の眼前にはそんなワナがちらつく。』

冒頭の記事が指摘する「景気や株価が底堅ければ物価は十分に下がらず、FRBの引き締め加速が最終的により深刻な不況や株安を招きかねない。米経済の眼前にはそんなワナがちらつく。」は以前からT-Modelが指摘するポイントの一つで、金利を引き上げて物価を下げられると考えているFRBを含む市場関係者の混乱を招く可能性がある。つまり、物価を押し上げた原因が大量の緩和マネーであることにまだ気づいていないことに原因がある。

実際、それを示す記事が6月4日日経夕刊『見えてきたFRBの想定レンジ』に掲載されている。

『気になるのはFRBが考えているであろう下値の目安だ。参考になるのが、アトランタ連銀のボスティック総裁の発言だ。

S&P500種が5月19日に年初来安値(3900)を更新した直後の同23日に、9月に利上げを一旦止める可能性があるとの見解を示した。株式市場はこれに飛びつき、S&P500種は4100台まで戻した。FRBにとって心地良い株価水準はS&P500種で3900~4300程度となりそうだ。経済のソフトランディング(軟着陸)を求めるFRBにとってインフレが落ち着くまではこのレンジでの推移が意図するところかもしれない。』と指摘する。市場ではFRBが利上げを止めれば株価下落は止まると楽観的に考えているということだが、このようにマーケットをコントロールできると考えているときは危険で、何かをきっかけに5月19日の年初来安値(3900)を下回るとパニックと成りやすく、市場が右往左往することになるのではないか。

6月2日のブルームバーグニュースでは『経済の「ハリケーン」に備えよ、JPモルガンのダイモン氏が警告』を報道している。

『米銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、金融政策引き締めやロシアのウクライナ侵攻といった前例のない課題の組み合わせに経済が直面する中、投資家は経済の「ハリケーン」に身構えるべきだと警告した。

ダイモン氏は1日、アライアンス・バーンスタイン・ホールディングスがスポンサーの会合で、「今はそこそこ日当たりが良く、順調で、米金融当局はうまく対処できると誰もが考えている」とした上で、「ハリケーンはすぐそこまで来ている」と発言。「それが小型なものか、『サンディ』のように超大型なのかは分からない。身構えた方がいい」と述べた。

ダイモン氏は、5月の投資家イベントでは米経済に「大きな暗雲」があると述べていたが、米金融当局がインフレとの闘いで向き合う課題を考慮し、その後、予想を更新したと説明した。JPモルガンとしてはバランスシート面で保守的な姿勢をとることで、この乱気流に備えていると同氏は述べた。一方で、個人消費の堅調に言及し、賃金の上昇と十分な雇用は経済の「明るい雲」だとも話した。』

ダイモンCEOが指摘する『経済の「ハリケーン」』とは何を意味しているのか。少なくとも、今、我々が知っている、もしくは想像できるようなリスクでないことは確かだろう。『JPモルガンとしてはバランスシート面で保守的な姿勢をとることで、この乱気流に備えている』とあるが、昨年6月にも『約5000億ドルの現金を蓄えている(2020年度総資産3兆3848億ドルの約15%)ことを明らかにした上で「高金利環境下で投資する機会を待っている」とし、「われわれのバランスシートは金利上昇から恩恵を受ける状況にある」。』と述べていた。22年3月期のJPモルガンの現金は7237億ドルまでさらに膨らみ、総資産3兆9500億ドルの約18%までさらに高めている。どんな「ハリケーン」が来るのかは分からないが、市場で蔓延している楽観論を真に受けていると、そのハリケーンを乗り越えることはできないだろう。今からそれを楽しむ準備が必用なのである。

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