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「所得が増えれば消費が増える」のか?

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「所得が増えれば消費が増える」のか?

2019/11/30日経一面に『所得と消費に広がる溝~滞る再分配、安定損なう』が報道されている。現在の先進国の低成長の理由を示す内容のためご紹介することにする。

『産業革命以来の工業化社会は大量雇用で生産性を上げ、賃金上昇を通じて成長の果実を行き渡らせてきた。富の源泉がモノから知識やデータに移り、分配の法則も変わった。時代に追いついていますか――。

企業の投資はデータや知的財産といった無形資産に集中し、優秀な頭脳の争奪戦が広がる。米国の雇用者全体に占める製造業の割合はピークの1940年代の4割近くから、足元で4分の1の9%弱に縮小した。日本もピークの60年代の4割弱から約17%に半減している。大量生産・大量雇用ではなく、富を生む知識を押さえた勝者が果実を総取りする経済が広がる。

拍車がかかるのは富の偏在だ。研究者らによる「世界不平等報告書」は、上位0.1%の富裕層の富が2050年に40%の中間層に匹敵するまでに膨らむと予想する。およそ40億人が「中間」と呼べない立場に置き去りにされる未来だ。上位1%の富が中間層40%を抜いたのは90年代。この動きは緩む気配はない。

所得と消費のデカップリング(分離)――。シカゴ大学のブルース・メイヤー教授らが指摘する問題だ。所得の上位10%と下位10%から格差の大きさをみると、80年から足元まで5割拡大した。一方、消費のばらつきはほぼ横ばい。一部の人が使い切れない富を手にし、経済全体で「有効需要の低下を招いている可能性がある」(大阪大の安田洋祐准教授)。需要の目減りが低成長、低金利、低インフレにつながる構図だ。

「国は私たちの富にさらに課税する道徳的、倫理的、経済的責任がある」。6月、投資家ジョージ・ソロス氏ら約20人の超富裕層は20年の米大統領選候補者に書簡を送った。提唱する資産税は10年で3兆ドル(約320兆円)の税収となる計算だ。富の再配分が経済を成長させると主張する。現実には、国境をまたいで活動する富裕層をつなぎ留めたい国は増税をためらう。そこに「モノから知識へ」の対応を急ぐ企業の人材投資が重なり、持つ者と持たざる者の差は一段と開く。再分配の機能が目詰まりし、中間層が痩せ衰えて所得と消費の溝が開けば、経済だけでなく社会の安定も損なうリスクが膨らむ。』

未だ専門家のあいだには「所得が増えれば消費が増える」と日本の高度成長時代のような経済の教科書を信じて、それをベースに予測している人々が跡をたたない。その教科書はもはや通用しておらず、記事にある「時代に追いついていますか――。」と問われているのである。

この冒頭の記事には、「上位1%の富が中間層40%を抜いたのは90年代、上位0.1%の富裕層の富が2050年に40%の中間層に匹敵するまでに膨らむ。」「所得の上位10%と下位10%から格差の大きさをみると、80年から足元まで5割拡大」と格差の実態がいかに大きいかを示すと同時に、今後、ますますその格差は拡大することを紹介している。

記事にあるように「需要の目減りが低成長、低金利、低インフレにつながる構図」は日本を見れば明らかだが、日本よりも格差が大きい米国の消費は堅調である。それは米国の家計の株式への投資比率が高いことから現在の株高で資産効果による消費が増えていることに加え、担保価値拡大による借入で消費する国民性だからである。米国の消費堅調を50年ぶりの水準に低下した失業率や小幅ながらも所得が拡大していることを理由にあげる専門家もいるが、それでは古い教科書から抜け出せておらず、未来を見誤ることだろう。最もらしい理由ほど今の時代に当てはまらないのである。米国の消費は株価依存度型であり、株価が暴落すれば一気に減少する構造であることだけは理解しておかなければならない。

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