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サウジアラビアの『ドル以外の通貨での石油貿易決済』発言は何を意味するのか?


サウジアラビアの『ドル以外の通貨での石油貿易決済』発言は何を意味するのか?

2023年1月18日ブルームバーグニュースは『ドル以外の通貨での石油貿易決済、サウジはオープン-財務相』が報道されている。

『世界最大の石油輸出国サウジアラビアのジャドアーン財務相は17日、ドル以外の決済通貨を使った貿易に関する話し合いにサウジはオープンだと明らかにした。ジャドアーン氏はスイスのダボスでブルームバーグテレビジョンのインタビューに応じ、「ドルやユーロ、もしくはサウジ・リヤルであろうと貿易決済方法について協議することに問題はない」と説明。「われわれが世界の貿易改善に寄与する議論を拒んだり、除外したりしているとは考えていない」と述べた。

基軸通貨ドルによる1970年代に確立された原油取引、いわゆる「ペトロダラー」システムの中核を成しているのがサウジだ。ドルとの通貨ペッグ(連動)制を堅持しているサウジだが、中国など主要な貿易相手国との関係強化も目指している。中国の習近平国家主席がサウジを先月訪問した際、両国はエネルギー政策・探査を巡る協力で合意。中国はサウジ産原油の購入を増やす取り組みを進め、そうした取引の決済を人民元で行いたいと習主席は表明していた。』

これまでドルは、第二次世界大戦の固定相場を維持した(金・ドル本位制)ブレトン・ウッズ体制が崩壊してからも、「ブレトン・ウッズ2」の世界の基軸通貨としての役割を果たし、各国が外貨準備として大量にドルを保有する状態が続いていた。その基軸通貨としての条件の一つが「原油決済」なのだが、ウクライナ紛争勃発後に米国など西側諸国が次々とロシアへの経済制裁を打ち出し、ロシアがドル決済システムの国際銀行間通信協会(SWIFT)から除外されたことで、米国と対立する国々ではドルへの警戒感が増している。

このニュースはそのような国々に対し、サウジがドル以外の決済を可能にしようとしているということであり、世界貿易における米ドルの支配的地位に揺さぶりをかけようとしている。ユーロの国際的地位を向上させたいEUも含め、外貨準備の「多様化」、「脱ドル化」が進んでいる。12月9日、サウジアラビアを訪問した習近平国家主席は、中国にとってサウジが最大の石油供給国であり、サウジにとっても中国が最大の貿易相手国であることからサウジ産原油の取引を人民元決済で行いたいと表明、「ペトロ人民元構想」を目論んでいたがその思惑通りにはまだ進んでいない。むしろ、サウジが今回「ドル以外の通貨での石油貿易決済」と中国以外にも門を拡げたことは、「中国一辺倒」にしたくないというサウジアラビアの態度を明確に表明したのではないだろうか。

ただ、22年7~9月10.77兆ドル(約1400兆円)規模の世界の外貨準備高のうち、ドル構成比は22年7~9月59.7%で、2000年1~3月72.3%からは「ドル離れ」は確実に進んでいる。今回のサウジの「ドル以外の通貨での石油貿易決済」発言で、「ドル構成比」がどこまで下がるのかが注目される。何故なら、この「ドル構成比」とドルインデックスの連動性が強いからで、仮に、「ドル構成比」がさらに下落するようだと、両指標の乖離がさらに拡大することから近い将来、ドルインデックスは暴落を意味する。それは同時に、「ペトロダラー」システムの崩壊だけでなく、借金大国である米国の破綻をも意味することになる。我々はその歴史的な瞬間を目撃しようとしているのである。

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