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『米カードの延滞・焦げ付きが増加』で米個人消費は?


『米カードの延滞・焦げ付きが増加』で米個人消費は?

2023年1月28日日経夕刊に『米カード、延滞・焦げ付き増~低所得層、消費意欲低下も 利用は堅調』が報道されている。

『米ビザなど主なクレジットカード会社の2022年10~12月期決算が27日出そろった。景気後退懸念がくすぶるなか、堅調な消費や旅行需要の伸びが収益を支えた。一方、低所得層などにも幅広く与信業務を手がけるカード中堅では延滞や不良債権比率の増加が目立ち始めた。今後、物価高や貯蓄率の低下傾向を受け、低所得層を中心に消費意欲が低下する可能性もある。

顧客向けに与信を手掛けるカード会社では返済の延滞率や融資の焦げ付きを示す不良債権比率が上昇してきた。幅広い所得層にカードを発行しているキャピタル・ワンでは、カードローンを含む全体の不良債権比率が1.86%と前年同期(0.79%)の2倍以上になった。延滞の増加も目立ち、30日以上の延滞率は3.21%と前年同期(2.41%)を上回った。(途中略)

富裕層の顧客が多いアメリカン・エキスプレス(アメックス)はカード利用が好調で22年10~12月期の売上高は141億7600万ドルと前年同期比17%増えた。23年も15~17%の増収を見込む。一方で貸倒引当金と融資が焦げ付いた時点で計上する償却費を合計した不良債権費用(信用コスト)は10億2700万ドルとなった。信用コストの増加が一因となり、純利益は15億7200万ドルと9%減少した。

新型コロナウィルス下での政府支援などで家計の余剰貯蓄が増え、米国でのカード利用は伸びている。米連邦準備理事会(FRB)によると、22年11月の消費者信用残高はクレジットカードの「リボルビング払い」ローンは前月から16.9%増加し、22年8月以来の大きな伸び率となった。ローン残高が増える一方、個人の貯蓄率は低下基調にあり、コロナ下の余剰貯蓄も減少している。米金融調査会社MFRのマリア・ラミレスCEOは「特に低中所得層で消費の先行き不透明感が強まっている」と指摘した。』

2022/12/19『11月米小売売上高0.6%減と、予想以上に大きく減少した理由は?』のT-Modelコラムにおいて、

『冒頭の記事では、「11月の減少は年末商戦が10月に前倒し」されただけで「好調な労働市場によって個人消費は底堅く推移」と指摘しているが、本当だろうか。ただ、「消費者は貯蓄を切り崩して消費に充てている。10月の貯蓄率は2.3%となり、2005年7月以来の低水準だった」との本音も指摘する。

米国の個人貯蓄額は異常な金額が給付された「コロナ給付金」で20年4月6.42兆ドルと21年3月5.73兆ドルの異常な水準まで膨らんだが、22年10月は4265億ドルまで-92%激減している。実は、この個人貯蓄額の取り崩しが米小売り売上高を支えてきたことが明らか。その結果、現在の個人貯蓄額はリーマンショック前の水準まで減少したことから、これ以上、貯蓄を切り崩して消費に充てることは限界を迎えている。

それを補うために急増し始めているのが「クレジットカード残高」である。クレジットカード残高は22年11月9387億ドルと過去最高、リーマンショック後のピークである2010年3月6487億円の1.4倍まで膨らんでいる。まだ、貸し倒れ比率が22年9月2.1%と低水準にとどまっていることから問題ないようにも見えるが、懸念されるのがクレジットカードの金利水準である。22年9月16.3%と、95年以降の過去最高水準まで上昇しており、過去、クレジットカートの金利の動きと貸し倒れ比率が連動した動きを示していることから、今後、貸し倒れ比率が一気に上昇する可能性も否定できない。

個人貯蓄取り崩しとクレジットカードで支えてきた個人消費がそろそろ息切れし始めたことを示している。だが、米国の個人消費を支える最も大きなものは「資産効果」である。つまり、コロナによる異常な緩和マネーで過去最高水準まで押し上げられた米国株式と米住宅価格の上昇が個人消費をけん引してきたが、この米国株式と米住宅価格が下落するときに米国の個人消費は本格的に縮小する。その兆しが現在の小売り売上高に影響を与え始めているのである。』と指摘した。

冒頭の記事にある『 新型コロナウィルス下での政府支援などで家計の余剰貯蓄が増え、米国でのカード利用は伸びている。』は間違いで、このT-Modelコラムで指摘したように、『貯蓄を切り崩して消費に充てることが限界を迎え、それを補うかたちでクレジットカードによる消費が急増している』のが実態で、そのクレジットカードの延滞・焦げ付きが目立ち始め、その結果、カード会社の貸倒引当金が増加している実態を報道している。実際、クレジットカードの貸倒比率は7~9月2.1%と、リーマンショック時の09年4~6月6.8%に比べ水準はまだまだ低いが、前年比では+34%増とリーマンショック時並みの勢いで悪化している。

米国の個人消費は、貯蓄取り崩し→クレジットカードから、いよいよ「資産効果」のみでしか支えられなくなってきており、今後は「米国株式と米住宅価格が下落するときに米国の個人消費は本格的に縮小する」可能性が高いことになる。現在のようにクレジットカードに支えられた米小売り売上高は前月比ベースで11月-0.6%→12月-1.1%と2ヵ月連続でマイナスに落ち込んでいるが、より注意しなければいけないのが移動平均ベースで、直近22年12月は0%とマイナス圏目前。実は、この移動平均ベースで、0%以下が表れると、過去、ITバブル崩壊やリーマンショック、コロナショックに発展しており、今回も「○○ショック」のシグナルとなるかが注目される。

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