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第372回:通貨価値下落に備えた売買で金の輝きは増すのか?

第372回:通貨価値下落に備えた売買で金の輝きは増すのか?

『ドル安トレード再始動か』

2026年8月21日日経新聞夕刊に『ドル安トレード再始動か』が掲載されている。

『20日の米国株式相場は反落し、ダウ工業株30種平均は前日比703ドル(1.3%)安の5万2759ドルで終えた。米財務省が19日に償還期間が10年以上の国債の買い入れ消却(バイバック)を倍増すると発表したが、翌日には米長期金利が再び水準を切り上げ、株売りにつながった。

国債買い入れ消却の倍増という発表を受け、19日にドルの総合的な値動きを示すドル指数は下落した。金(ゴールド)と銀(シルバー)は19日、20日とも買われた。(途中略)代表的な暗号資産(仮想通貨)のビットコインは一時7万2600ドルまで上昇し、5月下旬以来の水準にまで上がった。こうした市場の動きを受けて、米ドルの価値下落に備えた「ディベースメント取引」が再始動したとの見方が出ている。ディベースメント取引とは、政府債務残高の膨張や中央銀行の独立性低下などを受けて通貨価値が低下するとの見方を背景に、実物資産である金などを買う取引のことを指す。(途中略)

今回の国債買い入れ拡充の引き金は長期金利の上昇だ。そして金利上昇の根底にあるのが米財政の悪化や泥沼化しつつある米イランの軍事衝突などで、それらが重なる。財務省の奇策を通じ、米国経済の置かれた環境への不安が改めて意識されたかたちだ。(途中略)投資家はディベースメント取引の拡大に備えている。著名投資家ピーター・シフ氏はXで20日、債券価格の更なる下落を見据えて「賢い投資家は金を購入し続けた」と指摘した。投資家による米財政への懸念が強まるほど、金の輝きは一段と増しそうだ。』

ベッセント米財務長官はドルを下落させずに、米長期金利の上昇を抑える奇策を実行しようとしたのかもしれないが、どちらも狙い通りとはならなかった。ドル安は諦めたとしても、米長期金利の上昇だけは抑える方を選択したと市場は判断し、基軸通貨米ドルの価値下落に備えた「ディベースメント取引」(通貨価値下落に備えた売買)が再始動し、「ドルインデックス」は約3ヵ月振りの安値を付ける一方、NY金は21日に1トロイオンス4680.6ドルと約3か月ぶりの高値を付けたのだろう。

前回、「ディベースメント取引(通貨価値切り下げトレード)」が勢いを増していたのは25年10月頃で、ちょうどビットコインが史上最高値を付けた時期と一致する。従って、今後、さらに「ディベースメント取引」が勢いを増すかはこのビットコインがさらに上昇基調を続けるかで判断できそうで、今後のビットコインの動きは要注目である。

今回の「バイバック」は超長期債を買い入れる原資は短期債(Tビル)発行で賄う必要があるため、量的緩和でも、イールドカーブコントロールでもない。そして、その「バイバック」が行われるのは9月9日から中間選挙日11月3日の翌日の11月4日までで、高騰する住宅ローン金利の低下と長期金利の低下は中間選挙前の有権者の気分を良くすることが狙いのようである。市場はそれを見透かしたかのように、米国債の買い入れ消却(バイバック)倍増の発表直後、20日の利回りは急低下したものの、21日は10年債利回りは一時、前日比+0.07%の4.71%、30年債利回りも同+0.07%の5.26%と、効果は1日でほぼ帳消しとなった。

「ディベースメント取引」が勢いを増す局面で注目すべきは、「NYダウゴールドレシオ」で、過去、同指標がピークを打って下落すると、株価も下落する傾向があるためである。以前から、「NYダウゴールドレシオ」は08年のリーマンショック前と同様に、26年3月9日週9.2倍でボトムを打って、約半年後の9月頃にリバウンドピークとなる可能性が高いと指摘してきたが、少し早い7月13日週13.0倍でピークを打ったかたちで、これがピークとなるかを見極めるタイミングと言えるだろう。08年のリーマンショック前と同様に、約6か月先の9月頃まではこの水準で上下する可能性も否定できないためである。

また、もう一つ注目すべきは、「ディベースメント取引」によって「ドルインデックス」が2011年以降の上昇トレンドラインを明確に割り込む可能性が出てきた点だろう。過去、このトレンドラインを割り込んで、「ドルインデックス」が下落すると、T-Model理論『S&Pコモディティ/S&P500』が上昇、つまり、株式からコモディティティにお金が大きくシフトする大変化が起きるためである。だからこそ、ベッセント米財務長官はドルを下落させずに、米長期金利の上昇を抑える奇策を実行しようとしているのだが、そろそろそんな奇策などはないとの答えを突き付けられるタイミングかもしれない。そのとき、市場は大きな動揺となることは間違いないだろう。第一次オイルショックの1974年までにそれが起きたからである。

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