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過去最高に膨らんだ米カードローン残高が支える米国の個人消費の実態


過去最高に膨らんだ米カードローン残高が支える米国の個人消費の実態

2023年2月17日日経夕刊に『米カードローン残高が最高~昨年末 コロナ前超え、延滞も増』が報道されている。

『米ニューヨーク連邦準備銀行が16日発表した四半期ごとの米家計債務・信用調査によると、クレジットカードのローン残高は2022年12月末時点で9860億ドル(132兆円)だった。前年同月に比べ15%増えた。新型コロナウイルスの感染拡大前に記録した19年12月末(9270億ドル)を上回り過去最高を更新した。延滞率も上がっている。ニューヨーク連銀の分析担当者は「インフレと金利上昇に直面するなか、借り手の返済能力が試される」と指摘する。

22年12月末時点の住宅ローンや自動車ローンなどを含む総債務残高は16兆8990億ドルで、前年同月比8%増加した。22年9月末からは2.4%増え、前四半期末比でみた増加率はリーマン・ショック前の07年6月末(3.1%増)に次ぐ大きさとなった。22年12月末の住宅ローン残高は前年同月比9%、自動車ローンは同6%増加した。すべてのローンで債務残高が増えたが、住宅ローンは金利上昇により10~12月の組成額がほぼ半減した。

残高の伸び率が最も大きかったのがクレジットカードだ。米銀がカード発行を増やしてきたこともあり、総限度額は8%増の4兆3900億ドルと過去最高を更新した。米政府がコロナ下で講じた景気刺激策により、消費者が返済を増やし、カードローンの残高は21年6月末時点で7700億ドルまで減少した。その後は旺盛な個人消費に加え、インフレの影響もあって債務が膨張した。ニューヨーク連銀の担当者は「消費者の経済的基盤は概して強固だ」としつつ、増える借金に返済が追いつかなくなる恐れを懸念する。90日以上という深刻な延滞に移行した債務の比率は22年末時点で4.0%と、9カ月間で1ポイント上昇した。

特に若い借り手で返済が滞っている。深刻な延滞への移行率は18~29歳で7.6%、30~39歳で5.7%と全体平均(4.0%)を上回った。「学生ローンの返済が猶予されているのに、カードや自動車ローンの返済に苦労している人がいる」(ニューヨーク連銀)といい、学生ローンの返済が再開されれば延滞率が上昇する恐れがある。』

2023/01/30『『米カードの延滞・焦げ付きが増加』で米個人消費は?』のT-Modelコラムにおいて、

『冒頭の記事にある『 新型コロナウィルス下での政府支援などで家計の余剰貯蓄が増え、米国でのカード利用は伸びている。』は間違いで、このT-Modelコラムで指摘したように、『貯蓄を切り崩して消費に充てることが限界を迎え、それを補うかたちでクレジットカードによる消費が急増している』のが実態で、そのクレジットカードの延滞・焦げ付きが目立ち始め、その結果、カード会社の貸倒引当金が増加している実態を報道している。

実際、クレジットカードの貸倒比率は7~9月2.1%と、リーマンショック時の09年4~6月6.8%に比べ水準はまだまだ低いが、前年比では+34%増とリーマンショック時並みの勢いで悪化している。

米国の個人消費は、貯蓄取り崩し→クレジットカードから、いよいよ「資産効果」のみでしか支えられなくなってきており、今後は「米国株式と米住宅価格が下落するときに米国の個人消費は本格的に縮小する」可能性が高いことになる。現在のようにクレジットカードに支えられた米小売り売上高は前月比ベースで11月-0.6%→12月-1.1%と2ヵ月連続でマイナスに落ち込んでいるが、より注意しなければいけないのが移動平均ベースで、直近22年12月は0%とマイナス圏目前。実は、この移動平均ベースで、0%以下が表れると、過去、ITバブル崩壊やリーマンショック、コロナショックに発展しており、今回も「○○ショック」のシグナルとなるかが注目される。』と指摘した。

米小売り売上高は前月比ベースで、22年11月-0.6%→12月-1.1%→23年1月+3.0%と、1月の小売売上高(季節調整済み)はロイターがまとめたエコミスト予想+1.8%増を大幅に上回り、「○○ショック」のシグナルは点灯しなかった。

1月小売売上高の2021年3月以来、約2年ぶりの大幅な伸びとなったことをうけて市場では『借入コストの上昇にもかかわらず自動車などの購入が増加し、米経済が力強さを保っていることを示唆した』と指摘している。

たが、それは冒頭の記事にあるように、単に過去最高額に借金を膨らまして、消費を増やしたに過ぎないことが明らかではないだろうか。実際、個人消費の実態を示すクレジットカードの22年12月末ローン残高は前年比+15%増の9860億ドル(132兆円)と、最も高い伸びで過去最高に膨らみ、貸倒償却率も前年比+24%のスピードで同4%と、コロナショック時の5.3%には迫っている。

また、今後、注意しなければいけないのは借入全体の10%弱を占める自動車ローンで、22年12月末の貸倒償却率が前年比+42%と、リーマンショック時を上回る勢いで、2.2%とコロナショック時の2.4%に迫っているからである。

そして、何故、クレジットカードローンと自動車ローンに注目するかというと、過去、両ローンの貸倒償却率が下げ止まるまで株価が下げ止まらない傾向があるからで、両ローンの貸倒はまだまだ始まったばかりにしか見えないからである。

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