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雇用が良くなると、インフレ率は高まるのか?

雇用が良くなると、インフレ率は高まるのか?

2021/2/13日経夕刊に『米財政のインフレリスク』が掲載されている。

『米政府のコロナ対策は空前の規模に膨らんでいる。米議会予算局は11日、2021年会計年度の財政赤字が2兆2580億ドル(約240兆円)になる見通しだと発表した。昨年9月の前回予測から25%増える。見通しには1.9兆ドルの経済対策は含んでいない。実施されれば財政赤字は4兆ドル規模に膨らみ、国内総生産(GDP)に対する比率は18%と第2次世界大戦が終結した1945年(20.9%)に迫る。財政赤字の膨張にもかかわらず長期金利が落ち着いているのは、米国民の貯蓄率が19年の7.5%から20年に16.4%へと急上昇したのが大きい。だが、ワクチンの普及で消費ブームが予想される今年の貯蓄率は急低下する。金利上昇を抑えるには米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和に一段と頼ることになる。

そのFRBが金融政策を決める判断材料にするのはインフレ率だ。政策指針として「しばらくの間穏やかに2%を超える軌道に乗るまで」ゼロ金利政策を続けると明言している。1月の米消費者物価指数のコア指数は前年同月比1.4%上昇と2%には遠い。FRBのパウエル議長は10日の講演で「継続的な物価上昇圧力の高まりは見込んでいない」と、市場の一部でくすぶるインフレ懸念を否定した。労働市場は「強い状態にはほど遠い」と述べ、インフレ警戒より雇用を重視する考えをにじませた。

投資家心理を測る米株の変動性指数(VIX)は12日、1年ぶりに不安心理が高まった状態とされる20を割り込んだ。米株市場に漂う楽観論。それに強く異論を唱え、今週、市場の話題となったのは元財務長官のローレンス・サマーズ氏だ。4日と7日に相次いでワシントン・ポスト紙に寄稿し「コロナ対策は規模が大きすぎ、インフレリスクを高める」と批判した。インフレが加速すれば「景気後退と失業率上昇を招き、軟着陸は難しい」という。金融緩和ではインフレ予想は高まらないことは日銀の異次元緩和で証明済みだ。サマーズ氏が警告するように財政政策ならインフレが起きるのか。バイデン財政はある意味で興味深い実験でもある。』

この記事で気になるのは、『労働市場は「強い状態にはほど遠い」と述べ、インフレ警戒より雇用を重視する考えをにじませた。』という点。FRBのパウエル議長は雇用状態が良くなければインフレを警戒する必要がないと思っているかのような発言である。もし雇用改善→消費回復→インフレ率上昇などと昔の経済学で考えているようでは間違える可能性が高い。トランプ大統領時代、完全雇用の状態でもインフレ懸念が高まらなかったことをみれば、雇用とインフレに関連性が薄いことは明らかだろう。

先週2021/02/08『景気回復に着目した「よい金利上昇」はホント?』のT-Modelコラムにおいて、

『仮に、近い将来、金利上昇と株高の足並みがそろわなくなるとすれば、それは金利が上昇し過ぎて、マネー供給の量的緩和ができなくなるときである。記事では「金利上昇は景気回復に着目した良い金利上昇」と指摘しているが、原油価格が55ドル前後まで上昇していることが金利上昇の原因と考える方が自然である。従って、原油価格がさらに上昇するようであれば、米国景気に関係なく、長期金利は上昇することを意味する。その点も今後の相場の流れを見誤るポイントだろう。「どの水準まで金利が上昇すると量的緩和ができなくなるのか」。その一点に私の興味は移っている。』と指摘した。先週、原油価格は60ドル台を突破、10年債利回りは約1年ぶりに1.2%に達している。前年の異常事態の反動でこのまま原油価格が高止まりするようだと4月の米消費者物価は3%超えもあり得ることから、金融緩和路線の修正も想定しておく必要がある。元財務長官のローレンス・サマーズ氏の『インフレが加速すれば「景気後退と失業率上昇を招き、軟着陸は難しい」』との警告が現実化する日が近いのかもしれない。

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